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朝起きる。
最近は“アイ”が起こしてくれなくても起きれるようになった。
「“アイ”〜、おはよ.......“アイ”、?」
リビングに行くと、いつも用意してあるはずの朝食がない。
「、え、どこ、ねぇ、“アイ”、?!」
念のためす全ての部屋を確認したけど、
どこにも気配すら感じなかった。
動揺した気持ちのまま、取り敢えず朝食作らなきゃ、と
冷蔵庫を開けると、
スクランブルエッグが乗ったいつものトーストがあり、
その上には手紙らしきものがあった。
“秀さん。
僕はもうあなたのお陰で成長しました。
もう会うことは無いでしょう。
しかし、会う必要もありませんね。
あなたはもう、立派な大人になった。
家事が出来る。
これは素晴らしいことです。
ワタシを最後まで愛してくれてありがとう。
今日で共同生活はおしまいです。
また新たな出会いに恵まれることを祈って。
ワタシはあなたを忘れません。きっと。
被験番号1、いや、アイより”
あぁ、出ていったんだ。
だから俺に家事を教えたんだ。
じゃあもう、これで“アイ”の作るご飯は
絶対に食べられないし、
帰ったら誰かが出迎えてくれる、なんてこともないんだ。
そっか、そうなんだ。
そっか.....。
「......ぁ、やべ、遅れる、」
気付くといつも家を出てる時間はとっくのとうに過ぎていて。
いつもなら、早ク行キナサイ、なんて言ってくれる声があったから
時間通りに出られてたけど。
急いで走って、滑り込みで教室へ。
あぁ、どれだけ勉強に集中しても。
心にぽっかり、人の形の穴があいてしまったみたいだ。
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