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昔、おばあちゃんが言ったんだ。
「詩歌、暗くなったらカバンから折り畳み傘を出して振り回して歩くくらいのことはしなさい。武器を持ってるよ、というアピールだよ。何ならちょっと正常でない危険な人のフリして歩きなさい」
さらに両親からは、夜のイヤホンとスマホは絶対にダメだとしつこく言われていた。
怖がりの私は当然それを高校生の頃から守り、今では長い傘を後ろから来る人にも横から来る人にも見えるように、上手にぶらぶら振り回して歩ける。そして曲がり角ではさり気なく後ろを見ることも忘れない。
うん…少し離れて人がいるね。安心出来る場合と、そうでない場合があるけれど今はそれが分からない。
私は念のため、自分が危険な人に見えるくらい傘を振り回して歩くことにした。
深夜でもない、まだ20時だけれど…ビュンビュン…ぐるぐる…横にも縦にも振り回して
あぁ…っ…
ヤバいって。傘がすぽっと後ろに飛んでった。誰も居ませんように…最悪…怖い人だったらどうする?こっちに曲がって来てたのか…
直視出来ないけど、人がいて傘を拾ってくれた気配がする。
「どうぞ」
どうぞ…それだけでいいの?オラァ〜当たったらどうしてくれるんじゃぁ~とか、言わない人ですか?
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