お弁当

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「傘が飛んで来るとは思わなかったので驚きました」 綺麗な顔を少しほころばせた春野さんに申し訳なく、視線を彼の首くらいに落とす。 「わざと…攻撃ではないですよね?」 彼はそう言うと、半分差し出していた傘を自分の方へ引き寄せた。 「あっ、まさか…まさか…」 だんだん声が小さくなって…怪しまれるといけないともう一度春野さんを見上げた。そして 「わざと投げてはないです。でも…ごめんなさい…振り回していたので…」 やっぱりだんだん声が小さくはなる。 「楽しくて?」 「いえいえ…全然…」 湿気た夜に春野さんの爽やかな声は目立つようだ。お名前にぴったりの声かもしれない。 「何かトレーニングですか?」 「いえ…あの、ですね…怖くてです…」 危険な人のフリとは言えないけれど、とても不思議そうな春野さんに嘘ではない返事をしておく。
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