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「偉鳥ぃぃぃぃぃ‼」
「おお、寧推。どーした?何かあった?」
普段通りの偉鳥に、私は嬉しくなって、偉鳥の両手を握り、ブンブンと振った。
突然のことに偉鳥は目をまんまるにしている。
「よかった、よかった…‼本当に、よかった…‼」
偉鳥はその視線を気にして私の手を振り解いた。
…?
嗚呼、私のその様子を、クラスメイト達が何があったのかとチラチラと見てくる視線が嫌だったのか。…なるほど。
手をブンブンと振ったことを謝ると、偉鳥は不安げな顔をした。
「…本当に何かあった?俺、話聞くよ?」
「あー…そんな大した事無いんだけど。何か、夢を見て」
「どんな?」
「えー…っとね、何か、勝摩くんが殺人罪かけられて炎上しちゃって、」
「うん、そいで?」
「それで、同担の友達が皆、『こんなやつ推してられない』って担降りしちゃって遠縁になっちゃって、偉鳥も『犯罪者推すとか無理』って担降りして、遠縁になって、私の味方を私は全員失うっていう夢。しかも、それが超リアルで…。正夢何じゃないかと思ってさ…」
それを聞いた途端、偉鳥は顔を顰めた。
「なるほど。確かに、そんな悪夢見た日には、正夢じゃないかと疑っちゃうよな。大丈夫、例え勝摩様が燃えても、俺は寧推の味方でいるから」
ドキュン…ッ
「偉鳥、ありがとぉぉぉ‼大好きっ」
そう言って私は偉鳥に抱きついた。
クラスメイト達や、廊下にいた同級生たちが、それぞれの仲良しグループごとに、私達にチラチラと目を呉れてはひそひそと話す。
「え、ちょっとお前…」
どっきん、どっきん、と偉鳥の心臓の鼓動が私に傳わってきた。
…心臓のオトって、こんなんなんだ。知らなかった。
どうでもいいことを私が考えていると、偉鳥が慌てふためいて顔を真っ赤に染めて私から離れた。
「寧推……。抱きつかれるのは嬉しいけど…恥ずいからさ。せめて、公共の場ではやめてくれ…」
「えへへー…次からは公共の場では、止めるね。ごめん、偉鳥」
そう言って私は、胸の前で両手をフリフリと振った。
ソ、ラ、ソード、ソ、ラ、ソード、ラ、ラ、ソ、ラ、ソファミレミード…
授業時間一分前を告げるアマリリスのチャイム音が鳴る。
チャイムで私達に目を呉れていた人達は、皆、教室や移動教室の場所へとそれぞれに散っていく。
「あーやばい、もう授業一分前じゃん‼」
私は慌てて、自分のロッカーへと走る。
「偉鳥ー、確か次、美術だったよね?!内容って何だっけ」
「ん?テストじゃなかった?デッサンの」
「まじか‼え、教科書類要る?」
「テキスト、とかは美術室に置いてあるし…要らなくね?テストだし」
「それもそっか。ありがと、偉鳥。…早く行かないと、やばい授業遅れちゃう‼ただでさえ美術の成績悪いのに…。走って行こ‼」
「校則違反だとかは…今は言ってられないな。うし、走っていくかぁ‼」
そう偉鳥が言い終わるや否や、私達は美術室へ向かって廊下を全力疾走した。
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