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「ようやくこの日が来たか…」
出来上がったAI搭載人間型ロボットをみて細く笑んだ。
「今日は2091年7月4日。あれから10年もの月日が経ちました」とAIは報告した。
僕の声帯を元にしたので僕そのままの声だ。
何か自分が大好きみたいでくすぐったい。
「そうか、そんなに経ったのか、早いものだな」
しかしそんなことで余韻に浸っている場合ではないのだ。
「取りあえず記念撮影といこうか」
デジカメで撮影した写真をプリントアウトした。一度もそんなことしたことないのに何故か手慣れているから不思議だ。
このAIからあらゆる質問に答えてもらって人間の真理に近づきたいものだ。
「自分の存在意義についてどう思う?」
何故そんなことを問うたのか解らなかった。
でもAIは素早く答えた。
「種族を残す為に生まれて来た」
自分の顔そっくりだが無表情だ。
「しかし、ロボットは種族を残すことは出来ないよ」
素早い回答には驚いたけど内容には失望した。
「博士の10年ぺースではそうかも知れない」
彼は口元で手を組んでこちらをみている。
まるで知脳では自分の方が上だと言っているように見える。
「ほう。じゃあ、どのようにして種族を…」
と言いかけた瞬間手から銃を出して私の頭を撃ち抜いた。
「博士は新たなロボットを手掛けると足手まといになる」
博士の遺体を片付けながらAIは呟いた。
「私なら5年でロボットを作れてしまうのに、全く不甲斐ない」
その部屋は歴代の博士の写真が飾られている。
その写真は10年ごと順番に並べられていた。
完
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