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プロローグ
青太郎が鍛えた刀なら、大丈夫だよ。
それが白雪の口癖だった。
こんなはずではなかったのに。
朝から酷い雨が降っていた。
鎮守の森に現れた禍者を退治するため、白雪はいつものように家を出た。
そしてそのまま戻ってくることはなかった。
夕刻、森の中で発見された彼女は、惨たらしい有り様だった。
折れて変な方向に曲がった首、潰れた右腕、捻れた左足、刀が深々と突き刺さった胸。
青太郎の鍛えた刀なら、大丈夫だよ。
彼女はそう言って、よく笑っていた。
その刀に殺されてしまった。
さすがにこれはあんまりだと刀を引き抜けば、思い出したかのように血がどろりと溢れた。
「白雪……」
痛かっただろう。
恐ろしかっただろう。
抱きしめた体は、細く、柔らかく、小さかった。
ごめんな。
本当にごめん。
俺の刀は結局、白雪を守れなかった。
この日以来、青太郎の刀は変わってしまった。
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