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よく見ればまだ、顔にあどけなさが残っている。 白雪。 同じようにして死んでしまった女を想う。 血濡れた手を拾い上げる。 冷たい。 温めるように両手で握り締めた。 せめて看取ってやらなくては。 女は安心したように、ゆっくりと目を閉じた。 どうかもう痛くありませんように。 青太郎は祈りを込めて目を閉じた。 急に瞼の裏が眩しくなった。 太陽とは違う光の色に目を開けると、女の体が青く光っていた。 照らされている、というのではない。 女の内側から発光しているのである。 なにが起きているのか理解できず、青太郎は固まった。 光は徐々に収まりーー後には眠る女だけが残された。 「おい……。……おいおいおい!」 どうなっている。 青太郎は慌てて女から離れ、愕然とその体を観察した。 血が止まっていた。 女の頬には赤みが戻り、ふうふうと苦しそうな呼吸を繰り返している。 どろり。 乾ききっていなかった血の塊が、腹から重たげに落ちていく。 血。 青太郎は手を見下ろした。 生温かい感触が、急に気持ち悪くなる。 限界だった。 「師匠!」 木の影に隠れていた弟子が、泣きながら飛び出してくる。
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