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青太郎の意識はそこでぷつりと途切れた。
燃えている。
暗闇の中で、なにかが燃えている。
ああ、玉鋼か。
青太郎はその光景を、ただただ眺めていた。
目を覚ますと、視界いっぱいに弟子の顔があった。
近すぎてぼやけているそれを、青太郎は押し上げる。
「うっ……!ししょぉおおお」
涙と鼻水を垂れ流し、弟子はおんおん泣き叫んだ。
「し、死んじゃったかと……!ぼく、ぼくぅぅぅ」
「ああ、悪かったって」
腰に抱きついてくる弟子を引き剥がし、起き上がる。
どうやら自宅まで運んでくれたらしい。
今朝出したばかりの火鉢の上で、炭がちりちりと燃えていた。
愛用している鉄瓶からは、静かに白い湯気が漏れている。
そういえば喉が乾いたな、などと思っていると、気づいた弟子が湯呑みに注いでくれた。
「師匠のことは村の皆さんが運んでくれました」
ぐすっ、と弟子がしゃくり上げた。
賢い弟子はあの後集落へ戻り、人を呼んでくれたらしい。
しかしこの時既に大号泣。
ほとんど呼吸困難になりながら、「師匠が、師匠が……!」と長の家へ飛び込んだそうだ。
禍者に青太郎が殺されたと勘違いされ、集落はたちまち大騒ぎになったという。
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