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夏の夜
祭りの夜に奇妙な寂しさが続いて
鳥の鳴き声に一瞬意識が揺らいだ
提灯の赤い光が懐かしくて
耳元で囁かれた言葉に思いを馳せる
山が遠くに連なっていて
花火が空に打ち上がって消えていく
誰かが残した言葉が宙を彷徨っているみたいに
答えのない問いが繰り返される
あれはいつのことだったのか
先に続いているのが暗闇だったことを思い出す
それでも不安を感じながら
夏の夜の風に吹かれて蒸発していく
伝言は無数に辺りに散らばり
数々の思いを裂いていくから
願ったのはあの日の記憶だったのかもしれない
町は静かに存在し続けて
忘れかけていたことが急に目の前に浮上した
文法の壊れた文章も
それが何かわかるまで続いているから
無くしたものは海を漂い続けた
夜は深まっていき
虫の声が幾重にも響き渡る
途中で呟いたことは今でもそこにあって
幻想の中にいるみたいな奇妙な感覚がした
今でも思い続けている
夏の日の光に紛れた
追憶の中に辿っていった
影になってもまた繰り返すから
どこまでも持続しているような
宇宙のパズルがあるみたいな気がした
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