Ⅷ 無事の納品

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「ああ、いやあ、そいつはちょっと企業秘密でさあ…アハ…アハハハハハ…」  すると、さすがにマズイと思ったのか、アルゴナスは視線を逸らすと苦笑いを浮かべてはぐらかした。 「そういえば先日、ここらの港を荒らし廻っていた船泥棒の一党が、ボロボロの姿で転がされていたとか……もしや、それと何か関係があるのか?」  だが、小耳に挟んだ噂話から、今度はアウグストが要らぬ推理を巡らしてくれる。  なんとか事なきを得たとはいえ、造った船を盗まれたとあっては船大工として恥もいいところである。なるべくならば、そこは知られずにおきたいのが本心だ……。  そこであの後、ボコボコにしたドミニコアと海から回収したその一味をアルゴナス達は縛りあげると、その罪状や手口の書き付けを荒縄に添えて、町の衛兵屯所前に匿名で放置しておいたのだった。 「さあて。とんと憶えはねえですが、そんなこともあったらしいっすねえ……ま、あっしら船大工はいい船造って、そいつをちゃんと依頼主さまにお引き渡しするだけでさあ」  悪名高き盗人相手の大立ち回り……自慢したい気持ちもなくはないが、やはり恥じる気持ちの方がそれよりも優っている……アルゴナスはまたも惚けると、船大工の稔侍を以てそうハーソン達に嘯いた。 (El Espiritu del Calafate 〜船大工の心意気〜 了)
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