沢山の嘘と一つの真実

10/20
前へ
/20ページ
次へ
【え?アジア?確かインド?ニュースで経済発展が著しいて、アメリカとの戦いじゃ?無いの。】 結希の知識は教科書以外からも物だった。全ての教科書は未だに破り捨てられて居たからだ。 〔北海道の渡り鳥 振り込め詐欺も大変よね!熊本でも合ったよね?〕 沙樹は指に詰まった。心に終い込んでいる苦しい部分を射抜かれた。 〔九州の狼 うん、こっちの方でも合ったみたいだね?〕 結希は必死で覚えうる情報から選択しただけだった。それは、沙樹の心を抉る乱語だった。 【良かった。話変えられて、あのまま行ったら、憑いて行けなくなりそうだったし。】 〔北海道の渡り鳥 グーチって人色んな事でって言ってたけど?何やったんだろうね?〕 沙樹は怒鳴りたい感情に駆られた。 〔九州の狼 そろそろ学校の準備しなきゃ✌また後で、〕 〔北海道の渡り鳥 はーい、私も準備しまーす〕 沙樹はこれが限界だった。あれ以上続けていたら、彼女を罵倒し罵り、自分の憤りや感情を洗いざらいぶちまけて自分の心の捌け口として、しまいそうだったからだ。 結希は、 「どうしよう?合わせて用意するって?教科書も何も準備するものないし〰。」 独り言を呟いた。  しかし学校へ向かう結希の背筋は少しだけ伸びていた。誰も気が付かぬ小さな変化だが、結希の心には一本の細い針金レベルの芯が一本突き刺さっていた。 「うふふ。」 登校中に笑みが零れる結希の姿など皆無に近かった。結希は何も気付いていないが。  放課後、いつもの公園に着いた。スマホを開くのがこんなに待ち遠しいなんて初めての事だった。呼び出しは必ずあの男からだけだったからだ。 〔九州の狼 帰宅中かな?お疲れ様。〕 【わ~、着てる。】 結希の指はそそくさとスマホの打ち込みを始めていた。 〔北海道の渡り鳥 終わったよ〰✌今は公園!あなたは?〕 〔九州の狼 僕は帰宅して部屋に居る〕 〔北海道の渡り鳥 勉強中かな?お邪魔?〕 〔九州の狼 大丈夫、この時間の方が安らぐから、今日は何の授業だったの?〕 【不味い、如何しよう?】 〔北海道の渡り鳥 美術かな💧〕 結希は無難な教科を選んだつもりだった。 〔九州の狼 ゴッホとかピカソ、モネ、それに草間彌生何かも良いよね。〕 【え〰?何?草間彌生てぇ~?】 〔北海道の渡り鳥 ゴッホとか~ピカソって有名だよね〕 〔九州の狼 葛飾北斎や狩野派等も良いよね〕 結希は慌ててピと、ググると 【あ〰、お風呂屋さん見たいな絵ね!】 〔北海道の渡り鳥 富士山の絵良いよね〕 結希は返信しながら北斎を閲覧しまくった。 〔九州の狼 東海道は良いよね!波がダイナミックだったり、雪のシーンやら惹かれる物多いよね〕 結希はちょうど波の絵を見ていた。コンパス? 【へ〰、円の重なりでできてるんだ!博士ちゃん?10歳‼え!あたし💧小学生より下ぁ】 〔北海道の渡り鳥 波を円の重なりで書いてるよね〕 にわか仕込みの知識で応戦する 〔九州の狼 良く知ってるね~。狩野派も時々で大きくはみ出す絵だったり、色んな顔を魅せてくれる〕 今度は狩野派、 【狩野英孝?親は神職?え?芸能人?違うやん💧え~と、出た。】 〔北海道の渡り鳥 室町~江戸だよね✌SNSに散乱してるイジメについてどう思う?〕 〔九州の狼 そう言えば?どこから?僕のページに辿り着いたの?確かに多いよね。その 手の呟きや#希死念慮とかの記事。〕 【しまった!墓穴掘った】 結希は話の流れについて行けず、自分の近場にある簡単な情報に、無意識で手を伸ばしていた。 〔北海道の渡り鳥 あなたのページはたまたま辿り着いただけです。はい〕 【おかしいな?俺、イジメや希死念慮系の書き込みにしか、投稿して無いし。】 疑問は感じたが、頭の隅に置いておく事にした。 〔九州の狼 あなたの最近ハマって居る事は?〕 〔北海道の渡り鳥 おしゃれかな?〕 〔九州の狼 おしゃれ?ふ〰ん。〕 【まじい、服なんて病衣以外着て無い。】 〔北海道の渡り鳥 親がたまにネットショップで買う事を許してくれるから。〕 結希はこの頃、少し痣などもできていて、勤はバレないように結希の肌の露出に注意し、露店での服の試着などさせなかった。 〔九州の狼 ネットか〰!何系?〕 〔北海道の渡り鳥 お嬢様系かな?〕 結希は家では最近メイド服を着せられていた。勤の嗜好で、露出の多い物を、 沙樹はえ~と 〔九州の狼 きらびやかなお嬢様系?〕 ググった結果の返答だった。 〔北海道の渡り鳥 いや〰、長Tにロングスカートかな?冬はスパッツ系。〕
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加