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沙樹は1日に何度も自分のページを確認していた。
【今日は?まだか?】
〔北海道の渡り鳥 今はここ。〕
投稿に写真が添えられていた。
【ん?これ?福島じゃん。】
〔九州の狼 お前何処いんだよ?福島って?何してんだ?〕
〔北海道の渡り鳥 ちょっと小旅行〕
〔九州の狼 小旅行って?そんな範囲じゃね~だろう?〕
〔北海道の渡り鳥 大丈夫、お母さんと一緒だから。〕
嘘では無かった。お位牌をリュックに忍ばせて居たのだった。
〔九州の狼 お袋さんと一緒か。安心した。ここ数日心配してたんだぞ。〕
〔北海道の渡り鳥 ごめんなさ~い、じゃまたね。〕
沙樹はようやく頭からレーラの影が消えかけていた。しかし、レーラは沙樹の心を突っついて離れなかった。
【何かの知らせか?】
沙樹は前よりは落ち着いたがまだ渡り鳥の事がきがかりだった。
結希が文夫と別れた場所に戻ると、トラックは既に停まっていた。
「ごめんなさい。」
謝りながら乗り込むと、
「いや、俺も今着いたばかりだ。ほら。」
福豆屋の駅弁だった。
「こんなもんで済まねえ~。まあ福島の記念だ。」
文夫は同じ物を既にかき込んで居た。
「結希はゆっくり食え、俺は運転があるからな。」
ウィンクをしながら、牛めしを掻っ込んでいた。
「は~い。」
結希は助手席に深く腰を掛けた。
【ここ、何か?落ち着く。】
トラックは一路、東京へ向かった。
4日目を迎えた朝だった。
【ん?あいつサイトにアクセスしてやがる】
勤は気が付いた。直ぐに亜江に電話した。
「あの~、娘のスマホがとあるサイトにアクセスした形跡が。」
「はい、お調べしときます。」
「本当ですか?」
「はい、ちゃんとやっておきます。」
勤は半信半疑で電話を切った。
【良かった。結希ちゃんは無事そうね。】
亜江は何もしなかった。
東京の街が見えてきた。
【凄い、これが東京?】
「北海道とは大違いだろ~。」
文夫は結希に言った。
「はい、凄すぎ。」
「上野で降ろす。パンダでも観てろ!金だ。」
文夫はおもむろに一万円をポケットから出し渡した。
「え?でも。」
「良い。結希は何も悪くない。それへのご褒美だ。」
「ありがとうございます。」
文夫と約束の場所と時間を決め別れた。
パンダの前には列ができていた。
【へ~、こんな何だ?】
小さな子供を連れた家族でいっぱいだった。パンダの後はゴリラやトラの新しい厩舎を観覧し下へ降り、不忍池の畔に来た。
【ふ~ん、不忍池、狼さんなら色んな事を知ってて、教えてくれるかな?】
〔北海道の渡り鳥 不忍池に居ま〰す。ここってどんな歴史とか?あるのかな?〕
〔九州の狼 上野に居るなら西郷先生だろう。〕
〔北海道の渡り鳥 え?西郷先生?私そんな先生に教わった事無いよ?〕
〔九州の狼 違う~、西郷吉之助、西郷隆盛の銅像だよ。〕
〔北海道の渡り鳥 場所分からないからナビ入れてみる〕
〔九州の狼 不忍池からなら直ぐだよ〕
結希はナビで場所を確認しながら向かった。
〔九州の狼 西郷さんは薩摩の英雄だぜ〕
〔北海道の渡り鳥 そうなんだ?〕
【狼君に写真を見せて、色々教えて貰おうっと】
結希は写真を撮り、スマホの電源を切った。
勤は見逃さなかった。
【東京?どうやって行ったんだ?】
すぐさま亜江へ
「もしもし、柳さん、娘は東京に居ます。」
「どうして?分かったんですか?」
「スマホのGPSで。」
【結希ちゃんしくじったか?】
「分かりました。調べますので、彼女の電話番号を教えて頂けますか?」
勤は以前渋って教えなかったのに簡単に教えた。
「では、調べてみます。」
亜江は電話を切った。
【柳って信じて大丈夫か?】
勤は初めて亜江を疑った。
【結希ちゃんに何とかして伝えなきゃ。】
亜江はそれからショートメールや電話で暇を見つけては結希に伝え続けた。
結希は海老名に着いた。
「ここのメロンパンは有名だぞ、食事をして帰りに買ってこよう。」
文夫と連れ添い建屋に入った。
【凄い、色んなお店が並んでる。しかも早い。】
「好きな物食え、トラックだから、こんな所しか寄ってやれねえけどな。」
結希は首を横に振った。
食べ終わり、メロンパンを買いトラックへ戻った。
「次は大阪だ。」
文夫は大阪へ向け出発した。
結希はショートメール機能を切っていた。勤対策であった。
大阪に着き目が覚めると、
「ユニバーサルだ。遊んで来い。」
文夫は今度は五万円を結希に渡した。
「ここじゃあ、それでも足りねかもな?釣りなんか気にするな!東京じゃあ全然使わなかっただろう。」
「いえ。」
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