沢山の嘘と一つの真実

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 無言で横たわる少女、その上を惨たらしく蠢く鬼人。 「は〰は~は~、」 「うっう〰。」 果てた男は無言で部屋を出た。 少女は暗い顔を床に向け、ただ、剝ぎ取られ散乱したパジャマを集めるのだった。  岩下望、結希の母は宇城市三角で育った。幼き頃から、古川佑樹とは幼馴染であった。彼とは、良く三角西港でデートをしていた。  そして、23歳の時、 「望、ここってムルデルて人が設計したんだって、千葉にもその人が設計した運河が在るらしい、今度の休日行ってみないか?」 「うん。」 嬉しそうに頷く望、 「済まんな、肩身の狭い思いをさせて、たまには遠出をしよう。それなら人目も気にならないだろうし。」 「良いわよ。私が選んだ道だし、あなたとは離れたく無かったから。」 「済まん。」 「謝ってばっかり、もう。」 そう言って、佑樹を軽く突き飛ばした。常に望は、一定の距離を佑樹とは取っていた。つかず離れず、それが自分の立ち位置だと心に言い聞かせて。 「じゃあ、週末に東京駅で待ち合わせよう。」 「はい。」 二人は背を向けお互いに反対方向へ歩き始めた。 『東京~東京~お忘れ物ありませんようお降りください。』 【は~着いた。遠いいな。やっと着いた。】 望は待ち合わせの場所を探した。 「すいません。『仲間の像』ってどちらに在りますか?」 たまたま声を掛けたのが、三角勤だっだ。 「あー、中央通路の真ん中辺りですよ。僕もそっち方面だから、案内しますよ。」 気さくな感じの青年風だった彼の後に続き歩いた。 「ここです。」 そこには、もう佑樹が待っていた。 「お待たせ。」 佑樹は勤を怪訝そうな顔で見ていた。 「あ!私はご案内しただけで、失礼します。」 勤は足早にその場を去った。 「もう、分かり辛い場所選ばないでよ‼案内にも出てないし〰。」 「いや~、この像の寄り添った感じ、調べてて、ここかなって?二人で出会う場所は。」 「え?確かに。」 佑樹の顔は、もうすっかり変わっていた。二人は手を取り合い密着して、歩を進め出した。 これが、三人の最初で最後の出会いであった。  二人は千葉・流山の運河駅に降りたった。ここへ来るまでの二人は、地元では想像できない程の熱々ぶりで、周りの乗客は必ず目をやる程のラブラブぶりだった。 駅から利根運河までは直ぐだった。 「へ〰、これが三角と同じ人の設計なんだ。」 「そ~らしいよ。」 二人は橋を渡り、対岸をゆっくり進んだ。望は荷物も構わず、佑樹の腕にしがみ付き頬を擦らせ歩いた。 「あ!在った。ムルデルの石碑。」 「思ってたより、小さいのね、肖像が?」 「そうだね。」 望の顔を覗き込み、佑樹が答えた。 「さあ、飯にしよう。予約してあるんだ。」 二人は、運河に架かる浮き橋を渡り、向こう岸に戻った。堤防を登ると風格のある日本料理屋が見えてきた。 「明治25年創業らしいよ。」 「高そ〰。」 二人は案内され席についた。流石にここでは隣同士ともいかず、望はしょぼけ顔で佑樹の前に座った。 「出たら、また並んで歩こう‼」 頷きながら、顔が紅色に染まり、ほころんだ。 「はい、ご予約の坂東太郎です。今日は鹿児島産です。」 二人は目を見合った。 「ぷっ。」 軽く噴き出すと、 「ではごゆっくり。」 店員は下がって行った。 小声で 「失敗した。まさか、鹿児島とは。」 「ね!」 二人はゆっくり食べ始めた。  その後、新川を後に移動し、舞浜に着いた。 「ここがディズニーランド‼」 目を輝かせる望に、 「今日は泊まって、明日楽しもう。」 「え?日帰りじゃないの?着替えは持っては来てたけど。」 「ああ。」 「お泊りなんて、あなたが結婚する前よね?すっごく嬉しい。」 望のテンションはマックスだった。 「浮かれすぎるなよ!」 「無理で〰す。こんなに嬉しいの久しぶり。」  二人はチェックインした。 「お名前を。」 古川望 と佑樹は記した。  部屋へ荷物を置き、二人はテラスから景色を楽しんだ。何も語る事なく、ただ寄り添い並ぶ二人だった。  ベットはセミダブルであった。 【え?並んで寝られるの?いや〰‼】 望の脳内はパンク寸前だった。 夕食も済ませ、入浴もし望はさっさと、ベットに入っていた。 佑樹もそこへ潜り込んだ。 【ドキドキドキ、心臓の音が佑樹に悟られないか?気が気じゃなかった。】 暫らくの間静寂が二人を包んだ。 【だよね‼今まで何も無かった仲、だからこそ今までこれたんだから‼】 「ごめん‼」 突然佑樹が動き出した。 望の希が叶った。  裸で並ぶ二人、 「ウナギのせいかな?」
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