沢山の嘘と一つの真実

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照れ笑いながら座るレーラ、その横できょとんとした面持ちで席につく沙樹が居た。 「で?何時から?こいつを狙ってたの?」 少し沙樹の顔色を伺いながら 「幼稚園。」 「え?俺達小学校からだぜ!出会ったの‼」 「何で?そんな事分かるんだ?」 沙樹は素早く問いかけた。 「バーカ!お前以外の男は入学式でレーラちゃんに釘付けだよ。学校中の噂だよ!何人この子に振られたと思ってるんだよ。」 沙樹はレーラの顔を覗き込んだ。レーラ黙り込み顔を隠すよう下を向いた。 「フーン!で、幼稚園の何所でこいつに射止められたの?」 上目遣いで半示をちらりと見て、 「幼稚園バスの通りすがりで、私はハーフだったから、沙樹さんの所には通えなくて、そばの違う幼稚園に居たの。ママにお願いしたけど、転園は無理って断られた。」 沙樹と半示の目が合った。二人とも驚きを隠せずに居た。少しの沈黙の後、 「じゃあ、俺を断ったのもこいつ。」 小さく頷き、 「うん。」 「うえ〰、最悪ぅ〰カッちょ悪り〰!」 半示は項垂れながら呟いた。少し優越感と恥ずかしさの入り混じった気持ちで 「今度、親父にも紹介しようと。」 「良いんじゃね〰。」 無垢れっ面で半示は答えた。二人は見つめ合い微笑んだ。  それから何日か過ぎ沙樹はレーラに屋上に呼び出された。 「どうした?」 レーラの行き詰った表情に悪い予感がした。 「ばら撒かれていたの。」 切羽詰まった。表現だった。咄嗟に沙樹はレーラを押さえた。 「いや、逝かせて!ダディーはUAEの王族の血筋なの、バレたらどんな目にあうか?その前に!」 そう言いきると、力いっぱい沙樹を跳ね除けた。 「さようなら、最愛の人。」 レーラの体は宙を舞った。 「レーラ‼」 沙樹は身体から出せる限界の叫び声を上げ気を失った。  気が付くと沙樹はベットの上だった。 「良かった。目覚めて。」 沙羅が横で涙を浮かべて呟いた。 「・・・・・?」 沙樹は言葉も発せられなかった。勿論身体はピクリともしない。 「これから徐々に頑張れば良い。お父さんが最高のお医者様を探して下さるから。」 沙樹は眼で訴えた。沙羅は悟り、 「彼女は旅立ったわ。」 小さな声で伝えた。 【僕は泣く事も許されないのか】 沙樹に与えられた物はその一つ妄想の世界だけだった。  その後、知らせを受け半示が現れた。 「済まん、助けるって約束してたのに。」 深々と頭を下げながら沙樹の手を強く握った。 そして月日は流れ沙樹は言葉と右手を奇跡的に神から取り戻した。 「沙樹、レーラは家族や仲間達に送られたよ。お前の分もちゃんと届けておいた。」 半示だった。まだ鈍い発音で、 「あぎがとぶ。」 今できる最大限の表現だった。 また月日は少し流れ、沙樹はSNSを見られるようになっていた。 〔北海道の渡り鳥 貴方の書き込みに勇気を貰えました。〕 これが二人の初めて交わした文だった。 結希と沙樹 13歳の時だった。  結希は相変わらず勤の玩具にされていた。 「上手くなったじゃねいか。」 吐き捨てる様に言い放つ勤、背を向け出てく背中に最大限の悪意を向け睨む結希だった。今はそれぐらいの抵抗しかできなかった。結希は九州の狼に心惹かれていた。しかし、SNSに書き込む勇気が出なかった。九州の狼は他人の投稿欄に書き込むだけで無く、自分のページも創っていた。結希は毎日チェックするのが日課だった。 〔九州の狼 ハローエブリバディー!皆一人じゃ無いよ‼頑張ろう〕 沙樹には最大限の意地だった。自分が悲しみや苦しみに押し潰されるのを書くことにより発散させ、心を維持していたのだった。 【九州の狼さんって強い人】 結希の勝手な印象だった。 【彼は何でもでき、スーパーマンなんだ!】 結希は、そんんな九州の狼の強さに引かれ憬れそれを支えに踏ん張っていた。  公園でSNSを覗き込んでいると亜江がやって来た。 「結希ちゃん最近どう?」 「亜江さんこんにちは。平気よ。」 答えながらもスマホから目を逸らさないでいた。 「何を見てるの?」 結希は咄嗟に亜江を見た。 「一人の男性のSNS!」 「へー、どんな人なの?」 「分からない、やり取りした事ないから。ただ、私の想像ではすっごく強い人。」 その時着信音が鳴った。結希は身体をびくつかせた。 【あいつかも】? 開いて観ると、 〔九州の狼 こんにちは、北海道の渡り鳥さん。北と南まるっきり反対ですね。〕 彼からだった。結希はてっきり父親、勤だと思っていた。 【出したいから帰って来い‼】 とのメッセージだと思っていた。 「この人なの。」
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