3ヨイドレを戻す

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 再び目をさますと、片付いた部屋の壁にもたれて、私はぐっすり眠っていたようだ。  追い出したよ、と祖母が言った。  母が不安そうに覗き込み、おろおろと泳いだ視線を向ける。  父さんはと問えば、祖母がこう言った。 「ヨイドレを吸い込ませて、寺にあずけたよ。ああでもないこうでもないと、嫌味ったらしいことばかり垂れ流すくせがあるから、ヨイドレにはいい住処だろうさ。なあに、しばらくは戻ってはこれまい。しばらくは女だけで水入らず、穏やかだ」  あれこれと私たちがすることに持論を押し付けたり、勝手に決めようとしたり、拒否すれば水をさすなどろくなことをしない父だった。  いい加減にして欲しいと言っても、冗談を本気にするなと開き直り、改めないままだった父に対して、無視はしていたものの、母も私も鬱憤を溜め込んでいたことは確かだ。 「ヨイドレって言っても、あの子は自分に酔ってるだろう。ヨイドレはそういう奴ほど、じわじわ喰らうのが好きじゃろうて。せめてもの罪滅ぼしじゃ、このとおり」
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