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「ミヤビさん、起きてください。もう6時半ですよ」
「ん……」
「おはようございます。本日はXXXX年XX月XX日、X曜日です。天気予報によると、今日は一日中晴れ。気温は_」
「いい、いい。わかったから。ありがとう。おはよう、ルーシー」
そう言ってベッドから起き上がると、ミヤビは大きな欠伸をしてから体を伸ばす。
「はー眠い。……ていうかルーシー、私のことさん付けで呼ばないでって言ったでしょ? プログラム書き換えたりできないの?」
「申し訳ありません。お母様から、家政婦アンドロイドとしてミヤビさんと一定の距離を保つよう、言われたものでして」
彼女、いや、その女性のような見た目をした家政婦はアンドロイドのルーシー。科学技術の発展によって、見た目だけではなく声や、体温、さらには肌の感触に至るまで機械とはまるで分からない程精巧に作られている。
「一定の距離か……私は友達になりたいんだけどな。私と親しくなるのも、家政婦の仕事じゃないの? もうすぐここに来て1年でしょ?」
「……それもそうですね。ふふ、それではお母様の前でだけはミヤビさんとお呼びすることにしましょう」
「やった! たまーに融通きくもんね、あんた。そういうところ好きよ」
ミヤビはルーシーに向かって親指を立てる。ルーシーは外側でだけでなく、内面も精巧に作られており、緻密なプログラミングを施された人工知能を搭載することで、自然な会話や立ち振る舞いを可能にしている。
「ありがとうございます。それじゃあミヤビ、今日の予定は」
「わかってるよ。………どうせ今日も勉強でしょ?」
先程までとは打って変わって、ミヤビの表情が曇る。
「………その通りです。ただまずは朝食の時間にしましょう」
中学受験を数ヶ月後に控えたミヤビは、学校のない日でも日夜勉強に明け暮れている。1日に10時間近く勉強することも稀ではなく、その勉強のサポートをするのもルーシーの仕事の一つであった。
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