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倒れていて血塗れの露草さんに近寄ると、ケガらしいケガもなく眠らされているだけであった。
「……クラムボン、深海の魔女のコピー元にされたっぽいですねぇ。血を一滴吸えば、その姿も記憶もコピー出来ますので」
「でも、ケガが無いのは……」
「それは分かりません、ですが命に別状は有りません。ですので、教会の人間を呼びますね」
そのまま、フランチェスカさんは救済教会に電話していた。
僕は、露草さんをギュッと抱きしめて座っていた。本当に良かったと思う、生きていてくれてありがとうと。
「──ったくよー、良かったな。栞?」
「うん、本当に……良かったよ」
マリアはなにも言わずに、ただ背中合わせで座ってくれていた。優しい、そんな言葉を言うと怒るけども、マリアは本当に優しいと思う。
「さて、それでは除染作業が始まりますので、お二人はお帰りになってくださいね? 彼女は教会の病院に入れますので、命に問題はありません」
「……分かりました、ありがとうございます」
「おい、さっさと帰ろーぜ」
さっさと入り口へと向かうマリア、彼女についていこうとするとフランチェスカさんに呼び止められた。
「──いつも、マリアをありがとうございます」
「あ、いえいえ……」
「彼女は最近、変わってきました。……色々な楽しみにも貪欲になってきましたし、人を思う気持ちま出てきています。だから、本当にありがとうございます」
「……それは僕も同じです。マリアにはいつも、守ってくれな助けられています」
「うふふ、でしたら感謝の気持ちを伝えてみるのはどうでしょうか?」
「感謝の気持ち、ですか……?」
「えぇ、マリアも女の子です。貴方が似合うと思うお洋服を買ってあげましたら、きっと喜びますよ」
「……そうですね、マリアを誘ってみようと思います」
「──栞ーっ、さっさと帰ろうぜー?」
痺れを切らしたマリアが呼んでいる、フランチェスカさんにお礼を言ってから走り出した。
「遅くなってごめん、マリア」
「良いぜ、どうせフランの世間話につきあわされていたんだろ?」
「……まあ、そんな所だね」
「じゃあ、さっさと帰ろうぜ。目が覚めたら、お腹が減ったからさー」
雨上がりの満天の星空の下、二人並んで歩いて帰る。
その後、マリアは無言で歩き続けていく。夜更けの一時頃、隣の彼女は修道服を着ていた。
「ねぇ、マリア」
「……なんだよ、栞?」
「また魔女に襲われたら、今日みたいに来てくれるかな?」
「どうしたんだよ、一体。行くのは当たり前だろ、お前は私の護衛対象なんだからさー。……だから、勝手に死ぬんじゃねーぞ?」
恥ずかしそうに赤らめた頬を、そっぽを向いて隠す少女。そんなマリアが微笑ましくて、嬉しくなってしまう。
「──うん、必ず約束するよ」
──僕達は笑いながら、帰路を辿っていく。
──この世界に居る、全ての魔女を殺す為に。
『深海の魔女は底を見渡す』完
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