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──目を覚ますと、そこは巨大な水槽に漂っているかのように宙に浮かんでいたのである。
空から降り注ぐ日の光が水面で輝いていて、透明な水中から空を見上げているかに思える。動くにも抵抗があり、まさに水の中に潜っているとしか思えない。しかし、呼吸は出来るので本当の水中ではないらしい。
「……ここは、魔女領域なのかな?」
隣に浮かぶ、黒服の少女──ヘクセンナハト・マリアに声をかける。少女は眉間にシワを寄せて、目の前に佇む少女を見て応える。
「そーだろうよ、ここは魔女の懐の中だろうな」
「ようこそ、そして流石は言読 栞ね!」
目の前で佇む少女は、楽しそうに答える。
苔の付いた金色の潜水マスクを被り、青く澄んだ長い長いツインテールをたゆたわせていた。そして水平服を着たその少女は心底楽しそうに、両手を合わせて迎えるように差し出したのである。
「──ここは、私の魔女領域! 私こと『深海の魔女』が展開できる世界そのものなのよ!」
「……じゃあ、君があの事件を起こした犯人なんだね」
「えぇそうなの、私が信者を使って自殺させたんだよ!」
「……どうして、そんな事を」
僕の問いに、深海の魔女は指を合わせて楽しそうな声で答えた。
「──だってああすれば、栞は私を認識して探し出してくれるでしょう?」
「探し出してもらう為に、こんな事を……」
馬鹿げているとしか言えない。そんなことの為に、人が死に後輩が危険に巻き込まれている。魔女と言う存在は、どうしてこうも独善的なのであろうか。
「……まぁ、お隣の断罪兵器さんまで来るとは思っていませんでしたけど? でも、お陰様で邪魔者を排除する事が出来ますよね!」
そう言い放った彼女の周りに、どこからか大量の熱帯魚が現れ始めたのである。
あか・あお・きいろと色々な色をした熱帯魚達が、深海の魔女の周りを悠々と泳ぎ始めていく。その量は凄まじく、圧巻であった。
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