先生にも解けない問題

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「お待たせ致しました。駅北口行きです」  タイミング良くやって来たバスに乗り込んだ。ふわ、と一瞬感じたシャンプーの匂いも、あっという間にミント系の制汗剤の匂いに上書きされる。先生と同じシャンプーの匂いだなんて、きっと馬鹿な私の気のせいだ。  ——さみしいこと言うなよ。 (どっちが)  つり革に掴まって鞄を掛け直す。今日は典之たちと馬鹿騒ぎしよう。財布を空にしたって構わない。この間の大学生も、今日だったら付き合ってあげたのに。 「発車します。お立ちの方はお掴まりください」  車内に機械音声が響いた。そしてぐん、と横に大きく揺れた後、バスはゆっくりと走り出す。  左手に持っていたスマホがラインの着信を告げた。剥がれかかったドラえもんが指を擽る。 (ドラえもん……どら焼き……和菓子って) 「マジでウザ」  残念な連想ゲームにがっくりと肩を落とし、ウザさの元凶を力任せに引っ張った。案の定、まだらな白い跡が汚く残る。ドラえもんの亡霊、和菓子の呪い。 「あー、もう!」  スマホを鞄に突っ込んだ。ぐしゃりと音を立てたのはきっと進路調査表。  ——長谷川は俺の自慢の生徒。  もう、先生じゃなくなるなら、自慢の生徒じゃなくても良いよね?  ね、先生。 【了】
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