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「英美はさ」
亜沙実がピアスを触りながら口を開いた。
「今のままで十分大人っぽいって。この間だって大学生に声掛けられてたじゃん」
「あんなの単なるナンパだし。あーいう奴らって制服着てりゃなんだって良いんだよ。猿だって良いんじゃね?」
「ひゃはは。猿ってウケる。まあ、英美のスカート短いしねぇ」
「関係ねぇっつーの」
ぎゃははと笑う亜沙実に軽くツッコミを入れた。このスカート丈は先生に見てもらうための短さだ。膝や踵を綺麗に磨くのも、貯めたお小遣いでツルツルに脱毛するのも、全部ぜんぶ先生のためだ。馬鹿な大学生を引っかけるためじゃない。
「英美は今日もベンキョーすんの? それこそ就職するんだったら、今更気合い入れたって無駄っしょ」
亜沙実の何気ない言葉が胸に突き刺さる。先生の言葉が切れ味の悪いナイフだとしたら、亜沙実のそれは切れ味抜群の奴だ。笑顔で容赦なく切ってくるところは二人とも同じなんだけど。
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