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大きく目を開けフロントガラスを見ると、雨粒が勢いよくぶつかって、ぐしゃりと潰れ、ワイパーで乱暴に吹き飛ばされていた。吹き飛ばされたかと思えば、次の雨粒が同じようにぶつかってくる。飛ばされるって分かってるのにめげないよね。いや、違うか。分かってないのか。
「長谷川。数学が良くないんだって?」
前を向いたままの先生が訊いてきた。
「そんなの昔からだよ。分数が出てきた頃から苦手だもん」
「分数? おいおい、小学生じゃないか」
「そうだよ。ここまでなんとか乗り切ってきたんだよ。寧ろ褒めて欲しいくらいだよ」
ぷはぁと息を吐いて、組んだ両手を真っ直ぐに伸ばした。
「先生分かる? 数学って生きていくのに必要ないの。何の役にも立たないし。だから勉強するだけ無駄。意味分かんないんだよ」
「こらこら。そんなことないぞ。店で買い物するときにどっちが安いかとか、さっと計算できるだろう」
予想通りの答えに、私は人差し指を突き上げる。
「でしょ。そんなもんなんだよ。それなら分数とか分からなくたってなんとかなるもん。大体スマホで計算できるし」
「まあ、そう言われればそうだけどなぁ」
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