先生にも解けない問題

22/28
前へ
/28ページ
次へ
 メイクを直しトイレから戻ると、教室は数人の女子を残すだけで、静けさを取り戻していた。彼女たちはこれから図書室へ行くんだろう、教科書やノートを抱えた格好で立ち話をしている。私は自分の席に着くと、いつもの勉強セット——数Ⅱの教科書とノート、ペンケース、タブレットを取り出して机の上に配置した。 「あ、先生」  女子の一人が声を上げる。その声に反応して顔を上げると、入り口から先生が顔を覗かせていた。今日は白いシャツに黒いパンツだ。首から提げているネームホルダーの赤い紐がやたらと目立っている。 「吉田たちは帰るところか?」 「違います。これから図書室に行くところでーす」 「そうかそうか」  勉強するのか、エライなぁといつもの調子で彼女たちを褒めながら、先生は教室の中に入ってきた。手には黒い表紙の出席簿と何冊かの本。先生は副担だから、職員室への道すがらこうやってたまに顔を出してくる。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加