13人が本棚に入れています
本棚に追加
メイクを直しトイレから戻ると、教室は数人の女子を残すだけで、静けさを取り戻していた。彼女たちはこれから図書室へ行くんだろう、教科書やノートを抱えた格好で立ち話をしている。私は自分の席に着くと、いつもの勉強セット——数Ⅱの教科書とノート、ペンケース、タブレットを取り出して机の上に配置した。
「あ、先生」
女子の一人が声を上げる。その声に反応して顔を上げると、入り口から先生が顔を覗かせていた。今日は白いシャツに黒いパンツだ。首から提げているネームホルダーの赤い紐がやたらと目立っている。
「吉田たちは帰るところか?」
「違います。これから図書室に行くところでーす」
「そうかそうか」
勉強するのか、エライなぁといつもの調子で彼女たちを褒めながら、先生は教室の中に入ってきた。手には黒い表紙の出席簿と何冊かの本。先生は副担だから、職員室への道すがらこうやってたまに顔を出してくる。
最初のコメントを投稿しよう!