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(先生が先生じゃなくなる?)
全部知りたかった先生のこと。全部知っていたかった先生のこと。何で彼女たちが知っていて、私は知らないの?
その子はペラペラと話を続けた。
「和菓子屋さんになるんですよね」
「おっ。そこまでバレてるのか」
(和菓子屋?)
「職人になるんですか?」
「いやいや。流石にこの歳でそこまでは難しいから、経営の手伝いを、な」
「先生不器用そうですもんねー」
「こら。余計なお世話だぞ」
彼女たちはキャッキャと笑い、先生はどこか楽しげに注意をした。彼女たちは先生の前に横一列に並んで、一斉に口を開く。
「「ご結婚おめでとうございますっ」」
——ゴケッコンオメデトウゴザイマス。
楽し気なハーモニーに目の前が真っ白になった。先生は「ありがとう」と目尻にシワを沢山作って笑う。きっとマスクの下にも沢山シワが伸びているんだろう。
私の嫌いな先生の笑顔。
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