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先生はむぅと唸った。私はスカートの上に置いていたスマホを持ち上げて、リングの隣で剥がれ掛かっているシールを爪で引っ掻く。典之が勝手に貼ったドラえもんの奴。剥がれ掛かっているくせに、剥がそうとしても剥がれない。無理矢理剥がせば汚く跡が残りそうで、仕方なくそのままにしている。可愛くない。ウザイ。
『ジュジュ、ジュテーム』
先生の軽自動車はびゅんびゅんと飛ばす大きな車にバッシャンバッシャンと水を掛けられながら追い抜かれ、それでもとろとろと——きっと法定速度って奴で——走っている。
「ねえ、先生ってなんで軽なの?」
「ケイ?」
「もっとデカイ車に乗れば良いじゃん。パワーだって出るでしょ」
先生は「ああ、こいつのことか」とハンドルを叩いた。
「車なんて動けば良いんだよ。先生は街乗りしかしないから軽で十分なんだ。下手に大きな車にすると小回りがきかないし」
却って不便になるんだよ、と続ける。
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