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「でもさ、周りの奴らになめられてるじゃん」
「なめられてるって?」
「さっきの黒い車とか。泥水引っかけて抜いてったじゃん。こっちが小さいからってほんとムカつく」
マスクの中でほっぺたを膨らませれば、先生がちらりとこちらを向いた。優しげな瞳がぎゅっと細くなっていて、目尻に沢山シワが寄っている。
「なめられてるか。はっは。そんなの気にしなきゃ良いだろう」
「でもさー」
「でもじゃないよ。仮になめているんだとして、勝手になめさせておけば良いじゃないか。先生は気にしないぞ」
目尻だけじゃなくて、目の下にも沢山シワが伸びている。先生はぎゅって口を閉じると、ほっぺに——ほうれい線の横にくしゃくしゃってシワができる人。その顔も好きなのに、マスクの所為で殆ど見れない。ほんと、コロナムカつく。この世はムカつくことでいっぱいだ。
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