#1064日後に別れるふたり

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 俺は記入用紙に思い出せるかぎりの要素を箇条書きにした。大きなステージと暗幕、倉庫の扉、バスケのゴールが六つ、天井から垂れ下がるネット、大きな時計。  ひととおり書き終えると、店主がそれを横目に背後の本棚から宝石箱を取り出してきた。中には色とりどりの石がずらりと並んでいる。わずかに迷った指が、鮮やかな水色の宝石を摘まみあげた。石にはジャラジャラとした金属のチェーンがついている。店主はその端を摘まんだ。 「では、ご実家の付近から探してみましょうか」  続けて、本棚から大きな地図帳を取り出す。重たそうに広げて、住宅地図の真上に宝石をぶら下げた。 「何をするんですか」  たずねる俺に、店主は怪しげな笑顔を浮かべた。 「振り子が教えてくれるんですよ」  住宅地図の上に垂らされた宝石の振り子。最初こそ何の反応もみせなかったが、店主が体育館の箇条書きをボソボソと口にすると、次第に小さく揺れ始めた。揺れは少しずつ大きくなり、みるみるうちに力強く大きな円を描いて回りだした。
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