#1064日後に別れるふたり

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#1064日後に別れるふたり

 何でも探し出してくれる不思議な店がある。  そんな噂を人づてに聞いて、俺はその商店街を何度も訪れた。寂れたアーケード通りを行ったり来たり、横道へ入ったり出たりを繰り返し、住民たちから怪しげな目つきで見られるほど歩き回った。しかし、その店を見つけることはできなかった。  その日はたまたま知り合いの家へ寄った帰り道に、せっかく近くまできたのだからと、商店街へと足を伸ばしてみた。見つかるわけがない、ダメもとで歩いていると、何気に曲がった裏路地で怪しげな木戸を目にしたのだ。噂で聞いたとおり、目印となる看板代わりの『失セモノ出ル』と書かれた小さな貼り紙。  古びた引き戸は思いのほか低く、俺は鴨居に頭をぶつけてしまう。ガツンという鈍い音と、漏れ出た「痛っ」という声に反応して、店主らしき男は「……あっ、大丈夫ですか」と慌てて居住まいを正した。一瞬空いた間からすると、どうやらこの男、居眠りをしていたらしい。
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