#1064日後に別れるふたり

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 首をすくめて、あらためて店内に足を踏み入れる。そこは、車一台分の車庫ほどのスペースしかなく、壁一面の本棚と文机、客用の椅子が置かれただけの簡素な部屋だった。  和装で神経質そうな線の細い店主は、心配そうに俺を椅子へ促した。 「お怪我されていませんか」 「平気です。いつものことだから」 「どうぞ、おかけください。当店では、お探し物の大小にかかわらず、一件五千円で承っております」  店主がペンと申し込み用紙を差し出してきた。俺は言われるがままに記入する。小田壱成、三十二歳。住所と携帯番号も書き込む。その最中に、店主がたずねてきた。 「それにしても、背が高くていらっしゃる。スポーツかなにかされているんですか」  俺は意地悪く質問で返す。 「ええまあ。何をしてるように見えますか」
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