【第1話】

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 そんな小学校時代を経つつ中学に上がったのだけれど、一年生の時から渾名はやっぱり『うなぎ』。ほとんどが小学校からの持ち上がりだから、渾名が引き継がれてしまうのも至極当然だ。  中学に上がってからも、ペースを崩さず毎年のように好きな人ができたけれど、 「動きがクネクネしてる」 「なんだかナヨナヨしてる」 「女みたいな顔してる」 「内股で歩いてる」 「仕草がいちいち女っぽい」  そんなことを言われ続けて、僕がちゃんとした男子として見られることはなかった。そして相変わらず、小学校時代と変わらないイジリは続いた。  中学三年間で七人に告白したのに全敗に終わってしまった、という不甲斐ない戦績には大いに落ち込んだ。小学校時代と合算するとフラれた回数は……計算したくない。下手な鉄砲もなんとやら、ということわざを作った人間に怒りすら覚える。  インスタントラーメンがなかったら、きっとこの困難を乗り越えることはできなかっただろう。  オカマだなんだとイジられつつも果敢にアタックする僕の勇姿を評価してくれる女子がいるんじゃないかと、一縷の望みを持ったのだけれど、運悪くそういう女子と遭遇することができなかったようだ。そう、運がなかっただけなのだ。運だけはどうしようもない。
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