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でも、別に気にしていなかった。中学が駄目でも、高校生活があるのだから。むしろ本格的な恋愛という意味では、高校からがスタートだという感覚だった。
しかも高校は、中学時代の僕を知る人が誰もいない。
もちろん、わざと同じ中学の人が来なさそうな高校を選んだ。家が東京都練馬区なのだけれど、選んだのは、千葉県千葉市の奥の方にある偏差値五十五くらいの私立高校。ドアtoドアで二時間半くらいかかる。
進学校でもないのに、うちの学区からわざわざこんなに時間をかけてあの私立高校に行く人なんているわけがない。僕の戦略勝ち。
僕は歴史が大好きだ。特に、『項羽と劉邦』とか『三国志』とか、そのあたりの時代の軍師。范増とか、張良とか、諸葛亮とか、司馬懿とか。
超しびれる。頭一つで敵を翻弄し目的を達成する、というあの格好良さに憧れない男などいないだろう。
でも、そんな高名な軍師たちでさえ、多くが不遇の時代を過ごしている。それならば、僕にだって長らくそんな時代があってもなんら不思議はない。
今までの僕は、雌伏の刻だったのだ。あの諸葛亮孔明だって、劉備玄徳と出会うまで長らく雌伏の刻を過ごした。その後、諸葛亮は大きく花開いた。三顧の礼で迎えられ、天下三分の計をぶち上げ、それを達成した。
僕も、必ず花開く。高校では、きっと可愛い彼女をゲットしてみせる。可愛い彼女と付き合って、将来を誓いあう仲になってみせる。
そんな大きな野望を抱いていた。雄飛の刻は高校にあり、と。
何しろ、僕には秘策があった。高校生活で彼女を作るための、大いなる秘策が。
何事にも戦略的かつ一生懸命、これが自分の良いところだと自負している。
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