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1 たった一人の友だち
昇降口で上履きに履き替えて、目の前の階段を上がる。二階への踊り場にある鏡には、朝から楽しそうに友達とおしゃべりしながら階段を上る児童の姿が映っている。その児童たちの姿が鏡から消えると、残ったのはひとりぼっちでいる僕の姿だけ。
六年三組とかかれた教室の後ろのドアから中に入り、教室の後ろに置いてある名札を手に取り、窓際の前から三番目の席に座る。いつものように胸に名札をつけてから教科書を机の中にしまい、周囲の様子を観察する。クラスメートは誰一人、僕が登校してきたことに気づいていないように、友達とおしゃべりをしている。
机の上、いつもの位置にいつもと同じ文字でメッセージが書かれている。
早く一緒に遊びたいね。
少し読みづらい文字ではあるが、僕にとってこの小学校で唯一の友だちの文字。
僕も君と遊びたい。
相手は男の子なのか女の子なのかも分からない。そんなことは僕にとっては大した問題ではなかった。机の上だけの関係性のたった一人の友だち。
やがてチャイムがなり、朝の会を行うために担任の橋本先生が教室に入ってきた。いつものように男性にしては小さな肩幅、スーツ姿でネクタイの締まった首は細いのに、糸目で短髪な頭部は不釣り合いに大きい。さながら、糸のついた風船のような印象だ。
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