序章

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序章

 荒い息づかいとともに、バタバタと廊下に複数の足音が響く。 「まだ追ってきてる」 「は、早く逃げろ」  里美ちゃんと三目くんの大きな声で、僕はさっきまでより早く足を動かした。  人気(ひとけ)のない学校、人気(ひとけ)のない教室の並ぶ廊下を駆け抜けて、前を走る宏之くんの背中を追うように階段を駆け上がる。 「なんなんだよ、アレ」 「知らないわよ」 「か、顔が血だらけに見えたよ」 「いずれにしろ、人ではないナニカなんだろうね」 「上がってきた」  走りながらの会話で、余計に息が切れる。それでも、追ってくるから必死に逃げるために足にむちうつ。 「あ、あの教室、ドアが開いてる」  南ちゃんが走りながら前方を指差して、叫んだ。 「どうする、入るか?」 「は、は、入ろう。あ、あそこで、や、やり過ごそう」  三目くんの提案に、吉富くんが息を詰まらせながら返事をしている。その横に大きな体型に違わず、長い全力疾走は僕達よりも負担が大きそうだ。  後ろを確認すると、まだ追ってきているナニカの姿は見えない。このまま、あの教室に入り、息を潜めていればやり過ごせるかもしれない。  一番後ろを走っていた僕が部屋に駆け込み、ドアを閉めた瞬間。 「キャ————」  という叫び声が教室中に響いた。
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