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第一話 直貴、本物のお嬢さまに誘われる(一)
雑貨屋のハロウィンコーナーで、宮原直貴は腕を組みつつ商品をじっと眺めている。
もう我慢の限界だ。今度こそ執事職を投げ出してやる。
気の弱い羊をやめて、ワガママなお嬢様たちに反旗を翻してやるんだ。
「よし、決めたっ」
直貴は仮装パーティーの衣装が並んだ陳列棚から、狼男のゴムマスクを手にした。
ハロウィンの夜、直貴のマスクを見ておびえる女子三人組の顔が目に浮かぶ。
「フッフッフッ。これまでのことを反省して謝罪するなら、許してやらないわけでもない」
直貴はレジでお金を払いながら、口元を緩ませていた。
そんなことを考え、今日も憂さ晴らしをする。午後からのバンド練習を無事に乗り切るためにも、この程度の空想は許してほしいものだ。
せっかくの日曜日だというのに、今朝になって急に彼女たちに「バンド活動に立ち会え」と、無理やり呼び出された。
夕方のバイトまでのんびり買い物でもしようと思っていたのに、完全に予定が狂った。
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