十三話

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十三話

「お茶会ですか?」  休み明け、先日クラウスからお茶会に誘われた事を話すとベアトリスは目を輝かせる。 「お金持ちの旦那様のご友人という事は、皆様お金持ちなんですよね⁉︎」 「どうなんでしょう……私は何も聞かされていないので」  そもそもクラウスの事もよく知らないのに、その友人なんて想像もつかない。だがあの彼の友人なら多分良家の子息に違いないと思うが。 「ベアトリス、友人だからって必ずしも同じレベルとは限らないと思うけど。だって、ほら」  リュカはニヤニヤしながらベアトリスを見た後にルーフィナやテオフィルを見た。するとハッとした顔をしたベアトリスは頬を膨らませ拗ねてしまう。どうして彼はこうも事あるごとにワザとベアトリスを怒らせるのかと呆れる。 「ねぇ、そのお茶会って僕達も参加出来ないかな」 「え……」  最近は口数が極端に減っていたテオフィルが、珍しく話に入ってくると意外な提案をしてきた。一瞬驚いて目を丸くするが、でも確かにテオフィル達が一緒に来てくれるなら心強い。正直少し不安だった。勿論ルーフィナは、既に社交界デビューを果たしているのだからそんな情けない事を言うべきでないのは分かっている。だが不可解な夫の友人しかいないお茶会に一人で乗り込むのは怖過ぎる……。 「侯爵様に聞いてみます。もし大丈夫な様ならテオフィル様達も来て頂けると心強いです」  ベアトリスもリュカも来てくれると言ってくれたので、ルーフィナは早速クラウスに話をしてみる事にしたのだがーー。  却下された……。  その日の放課後、例の如く迎えに来たクラウスに直談判してみたが「今回はごく親しい人間しか招待はしていないんだ。だから絶対に、無理だよ」と和かに言われてしまった……。  なんでも今回はクラウスの友人であるドーファン公爵令息の妻主催のお茶会であり、伴侶の友人の妻の友人なんてもはや他人だ。お茶会の規模や主催者によっては友人の友人、更にその友人知人などを誘っても問題ない事もあるが今回は本当に小規模な身内の集まりの様なものなのだろう。  ルーフィナは落胆しながらテオフィル達には翌日丁寧に謝罪をして断った。  お茶会当日ーー。  夜が明けきる前に起床したルーフィナは、寝惚け眼のまま湯浴みを済ませると、化粧を施し髪を整えドレスに着替えてお気に入りの香水を纏い、控えめな装飾品を身に付けた。 「ふう……完璧です! ルーフィナ様、如何でしょうか? 本日はお茶会ですのでスイーツをイメージ致しました。もう何方のお国の妖精さんですか⁉︎ というくらい可憐です!」 「あらあら、マリーは随分と気合いが入っているんですね」 「当然です! 旦那様に私共のルーフィナ様の魅力を存分に見せつけて差し上げるんです!」  朝から一人だけ熱量の違うマリーとエマの会話する様子を眺めながら妖精の国ってそんなに沢山あるのだろうか、というか妖精? そんな下らない事を考えている内に出掛ける時間になっていた。 「……」 「……」  クラウスが迎えに来てくれたのだが、彼はルーフィナを見た瞬間黙り込み固まってしまった。一体どうしたのかと戸惑っていると今度は急に我に返った様子で手で顔を覆い此方に背を向けた。 「あの……もしかして、何処かおかしいですか?」  クラウスを見れば、何時も通り洗練された装いだ。それと比べて自分は子供っぽく思える。クラウスの反応からして、もしかすると侯爵夫人として相応しくないと一蹴されてしまうのかと不安になってきた。 「……別に。でもまあ、年相応といった所だね」 「そうですか……」  言い回しは当たり障りないが、歳の差のかなりある彼から言われると意味合いが変わってくる。要は子供っぽいと言っているのだろう。事実なのかも知れないが、内心ルーフィナは落ち込んだ。 「ほら、突っ立ってないで行くよ」  彼はそう言って先に馬車に乗り込んだので、慌ててルーフィナも後を追った。
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