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解明の朝
翌朝。 今朝もアカラの家に朝食をご馳走になりに行く。 アカラがいないからといって、親っさんもおばさんも、俺の事を放ったらかしにするような人たちじゃない。
二人ともやはり心労がたたっているようだった。 心配したが、それを彼らに伝えるよりも先に親っさんに「目の下にクマが出来てるぞ」と言われてしまった。
いつものようにトーストと目玉焼きを運んでくれるおばさんは、「クロス・ピースからさっき連絡があってね、ヒロに直接治安維持部隊の部屋に来るようにって。 そう言付かったの」と俺に伝えてきた。
アカラに連れられて何度かお邪魔したことはあるが、単独でクロス・ピースに、ましてやあの重々しい部屋に出向け、と? 苦虫を噛み潰したような顔をしたら、親っさんに頑張って行ってこい、といい顔で肩を叩かれた。
気が重いながらもクロス・ピースに到着し、場違い感が半端なくて挙動不審に陥りながらも、なんとか治安維持部隊の部屋の扉の前まで辿り着き、その扉を叩く。
出迎えてくれたアオもおそらくは徹夜だったのだろう、かなり疲労困憊な様子が窺えた。
「急に呼び出ししてごめんなさいね。 ヒロには真っ先に伝えときたかったのよ。
アカラについて ……いい知らせと悪い知らせがあるわ」
アオは、なんだか気を揉ませるような物の言い方をした。 だけど俺は単純に、いい知らせもあるのか! と思わず嬉しくなった。 呼び出しなどを喰らったので、ここに来るまで最悪なパターンばかりを想定していたからだ。
「いい知らせっていうのはね。 アカラ、容態がようやく落ち着いてきたみたいで。 今朝方に目覚めたそうよ」
「本当に?!」
無事に目覚めたと聞いて、俺は張り詰めていた緊張が一気に弛んでしまった。 アオに「話は最後まで聞きなさい」と軽く叱られた。
「悪い知らせ……コンバージョンの後遺症が残ってしまったそうなの。 アカラ……それこそ悪魔に属性チェンジはしなかったんだけど。 代わりに『声』を失ってしまったらしくて」
……声?を、無くす……?
そう聞いても、すぐには意味が分からずイメージが湧かなかった。 固まってしまった俺に、アオは申し訳なさそうに言葉を続ける。
「アカラは声を失ったことを受け止めきれなかったみたいなの。 その際隊長が傍に付いてたんだけど、駄々っ子みたいに泣いて泣いて。
それでまたドクターストップがかかっちゃってね、隊長も病室から追い出されちゃったのよ。まだメンタルも安定してないから絶対安静だって」
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