AIドクター

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 川橋さんの言葉に驚きながらも教授に質問する。 「それで教授。何故私をここに? AI医師(ドクター)なんてまだ臨床には使えないですよね。だって……」 「どんなに能力が高くても医療行為は出来ないと言いたいのかな?」 「そうです。そもそも医師免許が取れませんからね」 「うむ、だが一方で過疎地域の医師不足も深刻だ。この医師不足の解決がAI医師(ドクター)の開発の目的なんだ。そして今日の国会で医師法一七条特例法が承認された」 「特例法……」 「そうだ。この特例法はAI医師(ドクター)を人間の医師(ドクター)がモニターして、何か問題があれば人間医師(ドクター)強制上書き(オーバライド)出来る前提で、AI医師(ドクター)の医療行為が認められることになった。それは実際の現場での診断や手術だけでなくも対象となる」 「えっ? それでは……」 「ああ、君のオンライン手術の執刀をAI医師(ドクター)で実施できることになる」  想像もしていなかった教授の説明に言葉を失った。 「そうです。秋月先生の分身(アバター)として遠隔地のAI医師(ドクター)がオンラインでの診察や執刀を行います。勿論、先生がしっかりAI医師(ドクター)をモニターして頂く前提です。これにより過疎地医療の革命(ブレークスルー)(もたら)したいのです」  川橋さんは恍惚の表情で口角を大きく上げていた。
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