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通学リュックもスポーツバッグも見てみたが、案の定、弁当の空き箱は見つからなかった。教室前の廊下のロッカーの中に違いない。
このまま放置して明日になると母親に叱られる。
「オレ、教室棟に行ってくるわ」
休憩時間は十五分である。あと残り十分ある。後半の練習に入るまでにはグラウンドに戻ってこれるはずだ。
「行ってらっしゃい」
伊織も陽斗も深く考えずに見送ってくれた。
教室棟の廊下のロッカーに行くと、弁当箱はやはりそこにあった。翔はほっとした。汚れた弁当箱をこの高気温の中一晩放置することにならなくてよかった。
放課後の教室棟は静かだった。東にある特別棟から吹奏楽部の管楽器の音が、南にあるグラウンドからサッカー部の掛け声が聞こえてくる。気温は高くても空は確実に秋に移ろっていて、まだ五時台なのに日光はすでに斜めだった。
教室の中の時計を見る。あと五分くらいゆとりがある。トイレに寄っていくことにするか。
翔は何気なく教室と同じ階にある男子トイレに入った。何も考えていなかった。
男子トイレには先客がいた。
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