第2話 オレ的にはナシかな。

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 帰宅部の彼の腕力など野球で鍛えた翔の胸板にはなんということもなかった。けれど、翔は、失敗した、と思って自分で自分に傷ついた。こういう反応を示したということは、高橋はショックを受けたのだろう。少しちょっかいを出してやろうとは思っていたが、嫌いなわけではなかった。  翔はとぼとぼとした足取りで階段を降りた。高橋の姿はもうそこにはなかった。  グラウンドに戻ると、休憩時間の終わりから三分過ぎていた。監督にしこたま怒られてしまった。しかし高橋との時間はやはり五分くらいのことだったらしい。翔には数十分にも感じられたが、たったそれだけのことだった。
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