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第3話 あいつ、オネエっぽくない?
帰りはとっぷり日が暮れた。
翔は伊織と陽斗と三人で下校した。三人とも自転車通学で、家の方向はばらばらだったがバス通りに出るまでは一緒だ。
「お前さ、弁当箱取りに行くだけで何分かかってんだよ。トイレで大でもしてたのか?」
いつもだったらそんな伊織に軽口を返すところだったが、トイレで見てはいけないものを見てしまった翔はすぐには返答できなかった。
「トイレで高橋に遭遇してさ」
「高橋?」
「高橋冬彦。ほら、ぽぽの」
二人が「あー」と声を揃えた。
「何か喋った?」
翔は言葉を詰まらせた。ここで下手なことを言ったら何か悪いことを勘繰られるのではないか。しかし高橋の化粧は彼の重大な秘密のようにも思われたので、軽率に明かすことはできなかった。
仕方なく折衷案で、当たり障りのないことを言った。
「会話らしい会話はしてない。なんか高橋のやつ熱心に鏡見てて、声かけづらかった」
嘘ではない。でも真実でもない。翔はそれで曖昧に濁そうとした。
ところがだった。
そこで、伊織が声をひそめた。
「鏡見てた?」
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