第1話 2019年9月、ぽぽと高橋冬彦が付き合い始めたことを知った。

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 翔の脳内をいろんな男子が駆け巡っていった。ピッチャー、キャッチャー、四番バッター、サッカー部のあいつ、バスケットボール部のあいつ──不思議と嫉妬はしなかった。ぽぽはみんなのアイドルで、オレのものになるわけがない。むしろ彼女が収まるべきところに収まって加熱していた恋愛戦線が落ち着くのならそれはそれでよかった。 「へえ。誰と付き合うことにしたの?」  ところがそこで斜め上の返答が来た。 「冬くん」 「誰だっけ」 「高橋(たかはし)冬彦(ふゆひこ)くん。同じクラスでしょ」  衝撃だった。確かに存在する人間だが、あいつはそんなフルネームだったのか、と思うくらい影の薄いクラスメートだ。おとなしくて、ちょっと浮いている。友達といるところは見たことがない。いつもイヤホンで音楽か何かを聴きながら窓の外を見ている印象だ。顔を思い出せない。 「なんで高橋?」  ぽぽが照れ隠しに声を出して笑った。 「この前の花火大会、みんなで行ったじゃん?」
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