0人が本棚に入れています
本棚に追加
翔の脳内をいろんな男子が駆け巡っていった。ピッチャー、キャッチャー、四番バッター、サッカー部のあいつ、バスケットボール部のあいつ──不思議と嫉妬はしなかった。ぽぽはみんなのアイドルで、オレのものになるわけがない。むしろ彼女が収まるべきところに収まって加熱していた恋愛戦線が落ち着くのならそれはそれでよかった。
「へえ。誰と付き合うことにしたの?」
ところがそこで斜め上の返答が来た。
「冬くん」
「誰だっけ」
「高橋冬彦くん。同じクラスでしょ」
衝撃だった。確かに存在する人間だが、あいつはそんなフルネームだったのか、と思うくらい影の薄いクラスメートだ。おとなしくて、ちょっと浮いている。友達といるところは見たことがない。いつもイヤホンで音楽か何かを聴きながら窓の外を見ている印象だ。顔を思い出せない。
「なんで高橋?」
ぽぽが照れ隠しに声を出して笑った。
「この前の花火大会、みんなで行ったじゃん?」
最初のコメントを投稿しよう!