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第2話 オレ的にはナシかな。
高橋冬彦の本質について考えるきっかけはある日突然訪れた。
九月も半ばになったその日のこと、いつものように部活に励んでいた時だった。
五時半の休憩の時に友人の伊織がコンビニのおにぎりを食べ始めた。早弁ならぬ遅弁である。スポーツ少年はとにかく腹が減る。夕飯まで、どころか、部活が終わる頃までもたない。伊織はいつも夕方の休憩時に弁当を掻き込んでいた。
「おにぎりだけ?」
同じくチームメイトの陽斗が問いかけると、伊織がこう答えた。
「まだ暑いから弁当腐っちゃうじゃん」
そういえば冬場の練習の時彼は母親に昼用と夜用と弁当を二つ用意してもらっていた。夏場は文明の産物である保存料が使われたコンビニ食に頼っているということか。
そこまで考えて、翔ははっとした。
翔も毎日母親の手作り弁当を持参しているのだが、今日は午前中に空腹を感じて二時間目と三時間目の間に食べてしまったのだった。そのあと自分は弁当箱をどうしただろう。帰りに回収すればいいやとロッカーに突っ込んでそのままにしてはいないか。
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