第8話 守らなくてはならない存在

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第8話 守らなくてはならない存在

 だけど、これだけはわかる。  私は、目の前にいる伯父さんを失いたくないということだ。  これ以上、誰も犠牲にしたくない・・・! 「セリオ、何を呆然としている?」  ペングウィーが、私の左肩に乗る。 「私も戦う・・・・」 「これ以上、無理な行動をすることはよくないと思うな。 君を失えば、いじめが終わるということはないはずだ。 どうせ、こういうタイプは新たなターゲットを見つけるだけだ」 「私が戦う目的を、考えてみたの」 「それは?」 「自分を犠牲にするためじゃなくて、自分も自分以外の誰かも含めて、犠牲を増やさないために戦うって」 「それは、復讐心から来ていたりしないか?」 「それもあるかもしれない。 それよりも、私は守りたいものができた。 たくさんの人を失ってきた。 ママも、児童養護施設の人々も、魔法学園のみんなも、恋人も、全てあいつに奪われた。 だけど、私はなぜ救えないのか考えてみたの。 私は、どこかで自分だけを大切にしている気持ちがあったから。 この気持ちに気づいたら、二度と同じことはしない。 だから、ペングウィー、一緒に戦おう・・・」  ペングウィーは、私の話を真剣に聞いてから、返事をした。 「・・・・いいだろう。 魔力を持たない君と、無数の魔力を保有しているおいらが戦えば、きっとあの怪物に勝てるだろう」  私は槍をかまえて、アコーソに襲いかかった。 「セリオ、危ない。 今からでも、間に合う。 挑発するようなことはやめるんだ」 「挑発でもいい。 アコーソはこれらかも、いろいろな人を犠牲にしてまで、佐藤ってやつを探すと思う。 いるか、どうかわからな存在をね・・・・」 「セリオ、わし一人でなんとかなる相手かもしれない・・・」 「ここで、おいらの出番ということだ」  ペングウィーが、口をはさんだ。 「どっちにしても、セリオも、酒場のオーナーも、体内に魔力を持っていない。 怪我でも、したらどうするの? 補助魔法は? 不利な状況を、有利にするためだけにおいらがいる。 だから、二人とも、おいらに身を任せるつもりで戦えばいい」 「ペングウィー。 そういうことなら、わかった。 なら、二人とペンギンで、共闘しよう」  伯父さんは手足を使った素手のみで戦い、私は槍を振り回し、パングウィーが私と伯父さんの力を補助魔法で強化してくれた。  ついでに、ペングウィーは魔法で、アコーソの力を弱体化させた。 「力が抜けていく・・・・」  アコーソは、その場で倒れた。  ここで、とどめだ!と思った矢先、吸血鬼さんがどこからか現れた。 「吸血鬼さん!」 「おや、セリオじゃないか?」  吸血鬼さんは、私に会釈をした。 「倒すことを考えていませんでしたか・・・?」 「考えていたわ。 だけど、それが何か問題がある?」 「問題おおありですよ」 「じゃあ、どうすればいいの?」 「さあ、どうしたらいいんでしょうかね。 牢屋にでも、ぶち込んで、終身刑にしますか?」  ここで、伯父さんが答えた。 「そういう事情なら、それが一番だろう」 「了解です」 「吸血鬼さんは、どうしてここがわかったの?」 「わかったわけじゃないですが、魔法学園の生徒の大量虐殺の件が耳に届きまして、こうして犯人を探していたところに、偶然ですが、発見しただけです。 アコーソを目撃した人もいるくらいですからね、ここらへんでは有名なんですよ。 指名手配犯ぐらいのレベルになると、知らない人はいないというレベルになりますがね。 さ、おしゃべりはこの辺にして、これで失礼いたします」  吸血鬼さんは、こうして黒いマントにアコーソを包み込んで、空高く飛んで、去って行った。   私はその様子を見て、全身の力が一気に抜けていくのを感じ、その場に座りこんだ。 「終わった・・・・」 「セリオよ、まだ終わっておらん」 「まだあるの・・・?」 「わしには、まだ救わなくてはならない人が二人もいる」 「それは、もしかして・・・・」  大体、予想がつく。 「不幸寄せと、死に寄せを持つ者がおる。 そして、セリオにお願いがあるんだ」  私は、伯父さんの言うことを聞き逃さないようにと、必死に耳を傾けた。 「姪を助けてくれないか?」 「姪?」 「そうだ。 その子を守ってほしいんだ。 彼女も人間世界で暮らしていたのだが、保育園の頃にいじめにあってな、いじめっ子から離れるたために幼稚園に入園したんだ。 だけど、そこで死に寄せというものが発動してしまってな、保育園時代のいじめっ子が幼稚園や家にもやってきて、大量殺人にあい、精神病棟に入院しても、そこでも、数々の殺人事件に巻き込まれてしまった。 保育園でのいじめっ子は、やはり幼い子供だからという理由で見過ごされてしまったと知った時は、人間世界は少年法も含めて、犯罪者を軽視しすぎていると感じたよ。 そんな彼女に残された選択肢は、ひとつだった。 幼い4歳になるかならないかぐらいの彼女の決断だ。 異世界に逃げることだ。 逃げるということは、死に寄せの呪いを持った者からしてみれば、根本的な解決にはならないのだが、それが当時の彼女が一生懸命に考えてだした答えなのだろうな」
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