第9話 血の繋がりがあったとしても

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第9話 血の繋がりがあったとしても

 私は、考えた。  血がつながっているとしても、私は知らない。  見たこともないし、会ったこともない。 「わしにも、守りたい者が他にもあって、その子だけのために全力でというのは、正直に言うと難しい。 セリオは、血がつながったとしても、見ず知らずの彼女を助けたいと思わないか? 無理はしない。 これは、命を犠牲にしてしまうかもしれないんだ。 セリオは、どうしたいんだ?」 セリオは、血がつながったとしても、見ず知らずの彼女を助けたいと思わないか? 無理はしない。 これは、命を犠牲にしてしまうかもしれないんだ。 セリオは、どうしたいんだ?」 「その人に会ってみるわ。 決めるのは、そこからよ」 「セリオ・・・・」 「それに、守るべき存在も、助けなきゃいけない者も、一人じゃないわ。 不幸寄せでも、命に関わることじゃなくても、本人が苦しいなら、私は助けてあげたいわ。 そして、何も呪いを持ってなくても、悩みがあるかのしれない。 その人は、助けなくてもいいの? そんなことはないわ。 一人一人が、大切な存在のはずよ」 「セリオ、それならわかった。 まずは、その彼女に会ってみよう。 そこから、考えてみよう」  こうして、私と伯父さん、ペングウィーはその場を去った。  酒場が壊れてしまったのだから、営業しようがない。  だから、ここを出るしかない。  ここが、伯父さんしかいない酒場でよかった。  他の人がいたら、アコーソは間違いなく、巻き込んでいたと思う。  ペングウィーは浮いている状態だけど、叔父さん、私が歩く途中で、伯父さんに質問してみた。 「聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」 「何だい?」 「私の父親についてよ。 君が私の父の兄、つまり伯父だということはわかったわ。 だけど、だとしたら、私の父はどこにいて、何をしているのかしら?」 「これも、また残酷な真実になるのだが」 「いじめ寄せ、不幸寄せ、死に寄せの呪いがあると聞いて、これ以上の残酷なことなんて考えられないわ」 「ところが、あるのだよ」 「え?」 「実は、弟もいじめ寄せの呪いがあったんだ。 それで、ストーカー被害にあってな、母親とお腹にいるセリオをおいて、様々な場所へ逃げ回っている」 「逃げ回っているということは、生きているの・・・・?」 「さあな。 これ以上のことを教えられないな。 あまりにも知りすぎると、幼い君は精神崩壊とかしてしまいそうだ。 父親探しよりも、今の向き合わなくてはならないことに専念してくれ。 これ以上のことを背負わせたくないんだ。 この気持ちが、理解できるか・・・?」  私は考えてみた。  伯父さんが、どんな気持ちなのかを。  どれも私の想像でしかないけれど、伯父さんもきっと、自分の姪が運命を背負うことを見て、辛いと思う。 「伯父さん、ごめんなさい。 私は、何も理解でなくて」 「いいんだ。 謝らなくてはならないのは、こっちだ。 何もできなくてごめんな」 「そんなこと・・・・ない」 「セリオ、わかってあげるんだ。 難しいかもしれないけど、オーナーだって葛藤しているんだ」  ペングウィーに言われて、私は考えこんだ。 「葛藤・・・・?」 「そうだ。 どれが彼女たちのためになるかってことをね。 運命なんて、オーナーは実際は嫌っているはずなんだ。 最初は、何度も何度も目をそらしたりもしていた。 だけど、こうして向き合ってくれている。 それが、オーナーにとって、どのくらいの進歩だと思うかい?」  私は、伯父さんのことを何もわかっていない。  父親のことを知りたいと純粋に探っていたけれど、この真実が残酷なものだったら・・・・?  私なら、教えてあげたいなんて思えるかな? 「わからない。 わからないわよ。 伯父さんのことなんて」 「まだ幼い君に、全てを理解してほしいなんて誰も求めないだろう。 だけど、長年近くでオーナーを見てきたおいらだから、わかる。 オーナーは子供が好きだからさ、自分の子供含めて、君のことも愛せるからさ、余計に辛いんだろうね。 セリオは、まずは真実を知ろうとすることよりもさ、真実を語る側がどんな気持ちで話しているか考えることにしようよ」 「どうして?」 「世の中には偽りもあるし、真実を隠すことだってある。 だけど、それはどうしてなのか考えたことあるかい?」 「ない」  私は即答だった。 「感情があるからだ」 「え・・・?」 「悲しい、罪悪感、怒り、様々な感情があるだろう?」 「あるけど、なぜいきなりそんな話になるの?」 「今すぐわかってほしいってことはないから、じっくりわかっていけばいいさ。 さて、もうすぐ着くよ」  ペングウィーに言われて、目の前を見ると、小さな小屋があった。 「小屋・・・・?」 「そう、ここが君の従姉の家さ」 「セリオ、教えてあげよう。 君の従姉は、デーボレ。 死に寄せの呪いを持つ少女だ」  伯父さんは、こう言い、小屋の扉を開けた。  中にいたのは、私と顔が似ていて、白い肌に、肩より長い黒い髪に、宝石のような黒い瞳、黒の半袖の服に、白のスカート、黒の膝上のハイソックスの女の子だった。
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