第15話 致命傷の末に

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第15話 致命傷の末に

 気がつけば、私は病院の中にいた。  ベッドの近くには、ペングウィーの他に、見知らぬ男の子と浮いているコアラがいた。 「気がついたか。 この状況で、よく生きてこれたな」 「ペングウィー? このコアラは、そしてその男の子は知り合いなの?」  コアラが話しだした。 「おいらが、サルヴァトーレだ。 傷だらけの君を、おいらとペングウィーの治癒魔法で治した。 あと、気づくのが遅くなったら、死んでいるところだった」 「ありがとう・・・」  生意気だと思いながらも、お礼だけはした。 「俺は、コレイト」  男の子が自己紹介をした。 「君は、俺とサルヴァトーレを探していたと聞いたんだけど・・・・」 「そうよ・・・。 私は、君を見つけるために来た」 「ありがとう」  ペングウィーのお説教がここから始まった。 「今回は助かったからいいけれど、クライム地方は危ないってことはこれでわかっていただけただろうか?」 「すでに、役目は果たしたし、あとは修行する。 だけど、マイスターさんは嫌なの」 「はあ、わかった。 君が嫌なら、他のお師匠様を紹介するよ」 「ありがとう」 「それに、爆弾魔であるボンバは、どうなったのかしら?」  ここで、サルヴァトーレが話しだした。 「おいらが来るまでには、あいつは死んでいたよ。 逆に、君も人間だったら今頃は死んでいたってことを自覚してくれ」  ペングウィーはともかく、どうして助けたはずのサルヴァトーレからも説教を受けなくてはならないのだろう? 「とにかくだ。 セリオは、この傷が完治したら修行だ。 数年かけての」  ペングウィーは、いつにもまして真剣な表情をしている。  もしかしたら、これは完全に怒っているかもしれない。   「ええ。 魔法だわよね?」 「そうだ。 魔法だ。 潜在的な部分を引き出してでも、無理やりでも修行だ。 君の性格は、この辛さがないとだめだってよーくわかったよ」 「ペングウィー・・・・」  こうして、私はしばらく入院して退院してからが、地獄が待っていた。  マイスターさんを師匠としてむかえることはなかったものの、別の人を師匠としてむかえることとなった。 「今日から、よろしくお願いします」  ペングウィーの紹介だから、きっと大丈夫だろうと思っていた。  だけど、この師匠は厳しく、私は挫けそうになった。  辛い・・・・。  逃げ出したい・・・・。  魔力をうまく引き出せない私は、槍で風を出すことぐらいが限界だった。  だけど、この師匠はストレクツという人は、私を挫折に導くことしかできなかった。 「ほら、魔法を使えない貴様には、何も守れん! 今すぐ、魔法を鍛えろ!」  できないことばかりを怒られ、私は逃げ出す決意をする。    夜に私は道場から逃げ出した。  ここで、知らない人に腕を引っ張られ、車に乗せられた。   「大人しくしろ! 炎で脅すか!」    男の人に、顔の前に小さな炎を出され、抵抗ができなかった。  槍で戦いたいけど、それは男の人にとられてしまった。 「私を、どうするつもりなの・・・・?」 「この子は、爆弾を浴びても生きてるって聞いてな! 実験動物としていこうって思ったんだ!」 「え? どういうこと?」  こうして、私は複数の男の人に車からおろされ、見知らぬ場所につれてかれた。  ここは、どこ・・・・?  こうして、私はガラスの中に入れられた。 「実験動物は、どこまで耐えられるだろうか?」  この部屋から、電流が流れた。  痛い、痛い、痛い。  私は、その場で倒れた。  それでも、私の実験は終わらない。    私は個室に入れられて、火が出でても、そこから出られないなんてこともあった。  私は気絶することはあっても生きている。    この実験に耐えれる私は、何なのだろうか?  人間なのだろうか?  それとも、不老不死?  どちらにしても、こんな状態になるくらいなら、さっさと死んでしまいたい。  私は、そんなことを考えているうちに痛みというのがわからなくなった。  最初は、あんなに痛かったけれど、だんだん気絶することもなくなった。 「今日から、セリオという名前を捨てるんだ」  白衣を着た研究員に言われた。  だけど、これで納得するわけがない。 「どうして、この名前を捨てる必要があるの?」 「実験動物に、そんな名前はいらないと我々で判断したからだ」  私は数々の実験に耐えることになり、次第に辛くなくなってきた。  ペングウィー、厳しい師匠、伯父さん、サルヴァトーレ、デボーレ、コレイトの顔が浮かんできた。  今頃、どうしているだろうか?  私のことを心配しているかな?    だけど、今の私は身も心も実験動物になってしまった。    どのくらいの時間がたったのだろうか?  次第に、自分が何者なのかさえもわからなくなっていった。  無音の閉鎖空間で待機するか、実験室に入れられるか、研究員からの教育を受けるの繰り返し。  全てが、どうでもよくなってしまった。  ここで研究員から聞かされた。 「君と交流を持ってきた人たちを全員殺したよ」 「え?」 「ペングウィーという魔法精霊や、 サルヴァトーレという最強な精霊も、 君の伯父も、 デボーレという孤児も、 コレイトも、殺した。 デボーレやコレイトの場合は、不幸寄せが死に寄せの呪いのために生きることを諦めてしまって、殺すことを我々にお願いしてきたがな。 デボーレは自分のせいで人が死んでいくし、 コレイトは犯罪者の家族だし、母親が自殺したこともあってだ」 「嘘だよ! そんなはずないわ!」  私は、この現実を否定したい。  実際に、見たわけじゃない。 「残念だ。 みんなが、生きることを望んでいると思うか? それは、ない。 世の中には、死を自ら選択することもあるのだよ」  この瞬間、私は誰を信じればいいのかわからなくなった。  私といるだけで、みんながいなくなってしまうのか・・・。
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