第2話 異種族だけが集まる森

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第2話 異種族だけが集まる森

 私は夢も諦めていたし、希望も捨てきっていた。  だけど、オーナーの「挑戦してみないか?」という言葉に勇気をもらえた気がした。 「私、頑張りたい。 幸せって思える人生を見つけらるようになりたいの」  今まで、逃げ切ることしか考えてこなかったけれど、私だって幸せな人生を歩みたいんだ。 「私、あいつらが恐れる存在になれるなら、何だっていいです。 何にでもなります!」 「なら、紹介してあげるよ・・・・」  私は、オーナーと一緒に酒場を出た。  どこに向かう気なんだろう?  歩いて向かった先は、なぜか森。 「さ、この中に入っておいで」 「え、ええ」 「わしは、これで失礼するよ」  オーナーの姿が消えたのを確認して、私は森の中へ入っていった。  酒場のオーナーが紹介してくれた場所は、どうやら他種族が住む広大な森らしい。  オーガー、吸血鬼、エルフ、ドワーフなど空想上の種族と思われる存在が目の前にいる。 「すごい・・・・」  私は、感動していた。  これなら、追手はこれなくなるかもしれない。 「これは、これは人間であるね」  目の前にいは、吸血鬼と思われる格好をした黒ずくめの男の人がいた。  ここは、自分より戦力が上の相手なので、下手に刺激しないようにしよう。 「どなたですか?」 「わたくしは、ただの吸血鬼ですが、嬢ちゃんは?」 「私も、ただの人間です」 「槍を抱えているみたいだけど、戦闘武術を身に着けてきたのですか?」 「逆です。 戦闘武術を身に着けたいんです」 「ここは、修行場じゃないのですが」 「そんなことは、一目瞭然です。 私は強いパートナーがほしいんです」 「パートナーかあ? 嬢ちゃんが、吸血鬼になるって言うのなら考えてあげなくもないけど」 「吸血鬼になると、どうなるんですか?」 「まあ、無敵になりますね」 「吸血鬼は、日光に弱いと聞いたのですが」 「嬢ちゃん、そんな情報をどこから持ってきたのですか? 吸血鬼には、2種類あるんですよ。 その中の一つが、日光に弱いとかニンニクがだめという特性を持っているだけであって、わたくしはそれに該当しません。 現に、こうして昼間に活動できていることが何よりの証拠ですよ」 「吸血鬼さんは棺桶に入ったり、人の血を吸ったり、コウモリに変身したり、永遠の若さを持っていたりとかしなんですか?」 「嬢ちゃんは、聞いてみると知識が偏っていますね。 どれも、わたくしには当てはまりません・ 棺桶なんて死人と勘違いされて、寝ている間に燃やされるようなことはしません。 人の血なんてとんでもないです。 意識、記憶のどれかを奪ったほうが効率的です。 こっちも、顔を覚えられたらたまったものじゃありません。 コウモリに変身するとか、手品師ですか? 永遠の若さなんて、あるわけないじゃないですか。 どんなアンチエイジングしても、細胞の老化は遅らせることはできても、劣化はしますよ」  一方的に話す吸血鬼だけど、今の私はそんなことに動揺しない。  過去にいろんな壮大なことを経験しすぎて、ちょっとしたことでは、動揺しなくなっている。  それが、慣れっていうものだろうか? 「吸血鬼さん、これで君がこわくないってことがわかったわ」  私は、静かに答えた。  警戒心が緩くなってからは、敬語を使わなくなった。 「嬢ちゃん、肝が据わってないですか?」 「ええ。 私は同い年の子と比べて、落ち着いているってよく言われるけど、仕方のないことなの。 平凡な人生を、物心ついた時から送っていないの。 吸血鬼さんも、人生をどうしたいか選べたかしら?」 「選べる時と、そうでない時がありました。 ですが、嬢ちゃんの瞳のようにすべてを諦めきっているということはありません。 人生には、複数の選択肢があります。 それを、無駄にしたくないのです。 嬢ちゃんには、それが理解できますか?」 「理解できるか、できないかの二択で聞かれてしまえば、理解しづらいと答えるわ。 私に無縁な感情よ。 今の私は置かれた状況を、環境をどう乗り切るかなの。 だから、戦う手段をちょうだい」 「戦う・・・・ですか? 嬢ちゃんから、何の魔力も感じません。 一体、何を目指しているのですか?」 「自分の身は、自分で守れるくらいに強くなりたいの。 惨劇も、起こさせない。 ずべて、私の手で・・・・」 「復讐ですか?」 「私は、逃げたいの」 「逃げるですか?」 「逃げ切るために、戦いたいの」 「嬢ちゃんから、何の魔力も感じないっていうことは、何を意味しているかわかりますか?」 「私は戦わない方がいいということかしら?」 「そういうことです。 戦うことは、好ましくありません」 「私は、生きたい・・・・。 幸せな未来をつかみたい。 だけど、今のままでは幸せなんて訪れない。 だから、私には必要なの」 「嬢ちゃんの志は、認めました。 ですが、それはあまりにも無謀です。 仕方ありません。 嬢ちゃんには、吸血鬼の仲間を紹介しましょう。 そこで、嬢ちゃんが無謀すぎることをわからしましょう」  私は吸血鬼さんに腕を引かれ、マントの中に包まれ、どこかに連れて行かれた。
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