第5話 元いじめられっ子の末路

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第5話 元いじめられっ子の末路

「くっそ、強いなあ。 お前ええええ!」 「当り前よ。 ただ、守られているだけの私じゃないもの」 「佐藤は、どこだああああああ!」 「佐藤、佐藤って言うけど、過去のいない人のことなんて、諦めるのね。 どんなに探しても、どんな世界にも、手がかり一切ない人のことなんて、見つけようがないわよ・・・。 そう、私のパパと同じようにね・・・」 「うるさい! うるさい! 佐藤が、佐藤をいじめることこそが、うちの生きがいなんだ! 佐藤のいない世界なんて、死んでるも同然だ!」 「なら、君は人としてとっくに死んでいるわね」 「お前に、何がわかるんだああ! 保育園の頃の快楽は、今でも忘れない! うちは、そのためのストーカーになって、友達も犠牲にしてきた! 佐藤は、ここにいるとうちの直感が語っているんだ!」 「その佐藤って人は、本当にここにいるの? いないんじゃない? 君の勘違いなだけで」  私と元いじめっ子リーダーは、今は槍と銃での戦いだ。 「馬鹿にするなああああ! 人の夢を、踏みにじるなあああ!」 「これは、夢でもなんでもないわ。 これは、押し付けよ。 第一、その人にも、人権があるんだよ。 それを踏みにじっているのは・・・・・」 「うるさい! うるさい! 黙れ!」  そう叫び、怪我をして動けないバンピーロを撃ち殺してしまった。 「死ね! この野郎! はははははあはは」  笑いながら、バンピーロを無残に撃ち続けた。 「バンピーロ!」  バンピーロは血だらけのまま、目をつむり、返事がなかった。 「あはははははははは! やった! やったよ! 殺した!」  近くにいた私にも、返り血が飛んだ。 「とても、人とは思えないわ・・・・。 君は、人なんかじゃない・・・・」  私は槍を、元いじめっ子に向けた。  いっそのこと、このまま刺してしまおうかな?  私は、槍の刃先で銃を壊した。   「なっ・・・・!」  このまま、槍で元いじめっ子の左腕を刺した。  彼女は、左利きだったから。 「大嫌い・・・・!」 「あは、八つ当たり?」 「自分のしたことを、認めてなんだね。 教えてあげるよ。 君がしてきたこと。 今、目の前でしていること。 人殺し。 理解できたかしら?」  私は槍を、元いじめっ子の喉に向けた。 「何をするつもり?」 「言うまででもないわ。 選択によっては、君の未来はないと思わばいいわよ。 なぜ、無関係の人を巻き込むの?」 「決まっている。 あいつの佐藤の怯えている顔を、反応を見たかったから」 「君の言うことは、理解できないわ。 この殺人鬼。 消えればいいわ」 「うちは、に佐藤に会いたかった・・・・」 「会えないわ。 そこまでよ。 諦めるってことを、いつ学ぶのかしら? きっと、君は何十年もこの先で変わらない。 なら、地獄で天罰を受けることを祈るわ」 「あははははは・・・・」  こうして、元いじめっ子のリーダーは槍を弾き、笑いながら去っていた。  逃したはずだけど、なぜか追う気になれなかった。  私だけが魔法学校で生き残ってしまった。  生き残ったのは、戦い抜いた私と、逃げ切った校長や生徒ぐらいかな。  私は、その場を去ることにした。  また一人になってしまった。  そうだ。  私はこうして、また一人になる。  二度と、あんな惨劇が起こらなきゃいいけど。  そんな願いなんて、叶いそうになさそうだ。 「君の戦いぶりを見たぞ」 「君は、誰なの?」  目の前には、浮いているピンクのペンギンがいた。  ペンギンが、空を飛んでる?  しかも、ピンクのペンギンなんて、見たことがない。 「驚かせてしまってごめんね。 おいらは、ペングウィー。 君は?」 「セリオよ」 「セリオっていうのか。 おいらは、ここで言う魔法精霊って言うけど、君は魔力も感じないし、匂いからしてみても人間だけど、まさかあんなに強いと思わなかったぞ。 この槍からも魔力も感じられないけど、君の強さの秘訣はなんだい?」 「わからないわ。 ただ、ひたすらに修行しただけで、強くなったから」 「だけど、あれはさすがに才能とかないと、ここまでは強くなれないぞ。 どうする? おいらと契約して、パートナーになるか?」   「契約って言っても、何の契約をするの? それに、これには何かしろの代償とかあるのでは? 悪いけど、そんな怪しい勧誘なんて、乗らないわよ」 「君には、目的や願いはないのかい?」 「あったとしても、それは君がどうにかする問題ではない。 私は、これから向かうところがあるから」 「向かうって、どこへ?」 「また、遠いところに行くのよ」 「おいらも、行く~」  なぜか、すでに浮いているペングウィーもついてきた。 「歩くと森、森しかないのに、どこまで向かうんだ?」 「どこまでってことはないのよ。 ただ、ひたすら歩くだけ。 私は、遠いところに行ければ、どこでもいいのよ」 「家出か? これって、家出少女の発言じゃないか?」 「それもそうね。 だけど、家出少女との違いは、帰る場所があるということね。 私には、そもそも帰る場所なんてない」  このペンギンは、どこまでついてくるのだろうか?  ピンクのペンギンなんて初めて見るというのもあるけど、魔法精霊というのが何なのかわからないから、余計に警戒してしまう。  そもそも、魔法精霊って何?  私、そんな精霊がいることすら、知らなかった。  異世界だから、いろいろな精霊がいるのだろうけど。
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