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出店を回って戻ってきてみると、展示された僕らの写真の下には、けっこうたくさんのシールが貼られている。もしかしたらもしかするかもと、ちょっと期待が湧く。
「なんか、いっぱいシール、貼られてるね」
彼女も嬉しそうだ。
僕は、今日のスニーカーの思い出が、彼女にとってプラスになってくれたらいいな、と思いながら、展示された写真を見る。みんなそれぞれに、たくさんのシールが貼られている。
その中でも、僕らの写真と、うちの祖父母くらいの年のカップルの写真、2,3歳の男女の双子ちゃんの写真、この3つが競っている。
夕暮れが迫り、写真への投票が締め切られた。
特設ステージで、結果が発表されるというので、みんなが会場中央のステージ付近にそれとなく集まり始める。
結果、僕らは3位だった。
1位は、僕らの祖父母くらいのカップル、2位は、双子ちゃんだった。
1位の賞品は、なんと、有馬温泉1泊2日の旅。
2位は、駅前商店街の商品券。
3位は、ペアで持てるおしゃれなデザインのリュック。
壇上で、僕たち3組は並んでインタビューされ、賞品を渡された。
日が暮れて、花火の打ち上げ時間が間近に迫る。
夕闇の人混みをうまくかわしながら歩く。
「ねえ。今日、めっちゃ楽しかったね」
彼女が、僕の隣を歩きながら言った。
浴衣姿でも、おそろいのスニーカーなので、僕らの足並みはそろっている。
「そやね。いっぱい楽しいこと出来たね」
彼女の笑顔が、僕はひたすら嬉しい。
「あなたがいてくれて、よかった」
「ん?」
「マイナスやと思ったことも、プラスに変える方法、ちゃんと見つけてくれるんやなって。……嬉しかったよ」
「そうか」
「ねえ。あの1位の人たち、素敵やったね」
「そやな。なんか2人とも雰囲気が似てたね」
「あんなふうに」
言いかけた彼女が、僕をほほ笑んで見上げる。
「一緒に、年を取って行けたらいいね」
僕はつづきを言って、つないだ手ごと、彼女を腕の中に引き寄せる。
そのとき、大きな音と共に、空に大輪のひまわりが開いた。
花火会場に、歓声が上がる。
でも、僕の隣では、もっと素敵なひまわりが咲いている。
僕は――――もしかしたら、花火見てるひま、ないかも。
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