玉響

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 それから、俺の隣には彼が寄り添ってくれるようになった。あんなに遠巻きにされていたのに、クラスメイトたちは遠慮がちに話しかけるようになって、何も出来なかったことを謝られた。  すぐに態度を変える彼らを白状だとは思わない。面倒事には巻き込まれたくないし、俺だって同じようにただの傍観者になって、終いには加害者側になっていただろうから。彼が特別なだけだ。  ぎこちなく笑って答えながらも、心の奥底ではまだ彼らを信用しきれていないことを見透かしていた彼は、さりげなく俺を連れ出してほっと息を吐く時間を作ってくれた。その空間が何よりも大切で、宝物だった。  少しずつ前進できたような気がしてきた、そんなとき、父親の突然の転勤で遠く離れた地方に引っ越すことが決まった。  「……琴、」  「あっ、ごめん、何?」  「いや、最近よくぼーっとしてるよな」  「……ごめん」  彼が俺を下の名前で呼ぶようになって、俺もそれに慣れ始めたばかりだった。  どう伝えればいいのか。  そもそも、伝えるべきなのか。  実は嫌々俺の面倒を見ているだけで、遠くに行くことを知ったら喜ばれるかもしれない。彼がそんな素振りを見せたら、今度こそ俺は人間不信になるだろう。  彼に限ってそんなことはありえないと思いながらも、ネガティブな思考はどんどん嫌なことばかり考えてしまって、なかなか言い出すことができずにいた。
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