104人が本棚に入れています
本棚に追加
そうだったのか。
だから、今日はこんなにも。
「楽しいのですね!」
神田さんは目尻を下げて、私の髪をやさしく撫でてくれた。
この仕草は、上司のものではない。正真正銘、恋人としての甘いスキンシップである。
「他の誰かと、ここまで突っ込んだ話はしないよ。マイナーでオタクな話題でも、君はしっかり受け止めてくれるし、気持ちも通じる。真山だからこそ、俺はこんなにも幸せな時間を過ごせるんだ。君は特別な人だから」
「特別……」
「ああ、誰よりも特別な女性だ」
世界がばら色に染まる。
神田さんの強い口調と眼差しに、完全にやられてしまった。
彼が仕事以外の話をする女性とは――私だったのだ。
「真山……いや、妙子。あらためて訊くぞ。俺とのデートは楽しい?」
呼び捨てにされて、耳も頬も熱くなる。
私は彼の問いかけに、大きく頷いた。
「はいっ。もう、楽しすぎて困ってしまうほど楽しいです!」
髪を撫でていた手が止まり、私を抱き寄せた。
スキンシップが大好きな彼のキスは、愛情に満ちている。
英二さん――
幸せすぎて零れた涙は、彼が"いっちゃん"で拭ってくれた。
最初のコメントを投稿しよう!