出会いと面会

1/1
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ

出会いと面会

――その少し前のこと 「ゆうきくん、来てくれたんだね、うれしい」 「ぼくも、会えてうれしいです」    8月、お盆が近づく頃、ぼくは初めてみかげさんに会った。華奢で儚げな美しさを持つお姉さんだった。それでいて、同い年のような可愛らしさも持ち合わせている。  彼女とぼくは、おととし、花火を見るのがとにかく大好きということがきっかけで、ネットのコミュニティで知り合った。夏の夜に空一面にぱあっと広がる、はかなく、美しい芸術がたまらなかった。  みかげさんは病室から外に出られないので、ぼくは毎年8月上旬にこの街で開かれる、大規模な花火大会の会場で写真を撮影して、彼女に送っている。  他愛も無い会話をしているうちに、同じ街に住んでいるということがわかり、すぐにでも会いに行きたいと思った。  しかし、彼女は病を得て長期入院中とのこと。病状は一進一退を繰り返しており、退院の見込みは経っていないとのことであった。  さらに時期も悪く、新型ウイルスの影響で、面会は禁止されていて、会いに行きたくてもずっと会いに行けなかった。  LINEで他愛もない会話をかわしつつ、1年ほど、何とか状況が好転しないかと願っていたところ、今年5月から病院の規制が緩和され、一日15分以内で面会が出来るようになった。それを聞いていてもたってもいられず、病院まで逢いに来たのだ。  住宅街の中にあり、病室から見える窓からは、大きな川と河川敷にある広場が見えた。  それにしても、彼女は、写真で見るよりもずっと美しく、そしてどこか儚げ(はかなげ)な感じもする。  すぐにでも消えてしまいそうな気がした……、ぼくは素直に自分の気持ちを口に出すことにした。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!